判旨
民法722条2項の過失相殺において、裁判所は被害者本人に過失がないと認められる場合には、同条を適用しないことができる。また、第三者作成の私文書の成立について、裁判所は相手方の認否を待たず、自由な心証によってその成立を認定し得る。
問題の所在(論点)
1. 民法722条2項の過失相殺において、被害者側に過失が認められない場合に同条を適用しない判断の適否。2. 第三者作成に係る私文書の成立を、相手方の認否や直接の立証がない場合でも、裁判所の自由な心証によって認定できるか。
規範
不法行為に基づく損害賠償における過失相殺(民法722条2項)は、被害者に過失が認められる場合に、裁判所が損害賠償の額を定めるに当たって斟酌し得るものである。また、証拠法上、第三者が作成した私文書の成立については、挙証者がその成立を直接証明しなくとも、裁判所は弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、自由な心証によってこれを認定することができる。
重要事実
本件は損害賠償請求事件であり、被害者Dその他の者に対して民法722条2項の過失相殺を適用すべきかが争点となった。また、訴外の第三者(E、F、G、H等)が作成した文書(甲6号証、甲7号証)の証拠能力およびその成立認定の適法性が、上告理由において争われた。原審は被害者側に過失の責めはないと判断し、過失相殺を適用しなかった。
あてはめ
1. 過失相殺について、原審が認定した事実関係に基づき被害者側に過失がないと判断した以上、民法722条2項を適用しないことは相当である。2. 私文書の成立認定について、上告人は第三者作成の私文書について成立が証されていない旨を主張するが、裁判所は必ずしも挙証者による直接の立証を待つ必要はない。弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を斟酌し、自由な心証(民事訴訟法上の自由心証主義)によってその成立を認定し得るため、原審の判断に違法はない。
結論
被害者に過失がない場合に過失相殺を適用しない原審の判断は妥当である。また、第三者作成の私文書の成立を自由心証により認定することも適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
過失相殺の要件に係る事実認定の適法性を確認するとともに、証拠法において私文書の形式的証拠力が必ずしも厳格な成立証明を要さず、自由心証により補完され得ることを示した。実務上、過失相殺が否定される事案の基準や、第三者報告書等の証拠採用プロセスの根拠として参照される。
事件番号: 昭和42(オ)819 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
(省略)