判旨
保険募集の取締に関する法律11条(現:保険業法283条)に基づく保険会社の損害賠償責任に対し、民法722条2項の過失相殺の規定を適用することは正当である。また、その過失相殺の割合の決定は事実審裁判所の自由裁量に属し、特段の説明を要しない。
問題の所在(論点)
保険募集の取締に関する法律11条(保険募集人の不法行為に関する保険会社の賠償責任)に基づく責任追及において、民法722条2項による過失相殺を適用できるか。また、過失相殺の割合を決定する際の裁判所の裁量の範囲が問題となる。
規範
保険募集の取締に関する法律11条による保険会社の責任は、その性質上、民法715条の使用者の責任と異別のものであるとする理由はない。したがって、損害の公平な分担という見地から、被害者に過失がある場合には、民法722条2項を適用し、または類推適用して賠償額を算定すべきである。
重要事実
保険外務員E(別名F)が保険募集に際して不法行為を行い、上告人らの先代であるDに損害を与えた。上告人らは保険会社に対し、保険募集の取締に関する法律11条に基づき損害賠償を求めた。原審は、被害者Dにも相当の過失があり、それが加害者の不法行為を助成して損害を発生させたと認定し、民法722条2項に基づき賠償額を2分の1に軽減した。
あてはめ
本件において、被害者Dには相当な過失が認められ、これが加害者の不法行為と相俟って損害を生じさせたといえる。民法722条2項の過失相殺は、損害賠償制度における公平の原則に基づくものであり、保険会社が負う代位責任的な性格の賠償責任においても同様に妥当する。裁判所が被害者の過失を適法に認定した以上、その過失をいかなる限度で斟酌するかは事実審の職権に属する裁量事項であり、2分の1とする軽減についても特段の理由説明を欠くものではない。
結論
保険募集の取締に関する法律11条に基づく賠償請求に対し、民法722条2項を適用して過失相殺を行うことは可能であり、2分の1の軽減を認めた原判決に違法はない。
実務上の射程
保険業法283条(旧法11条)に基づく損害賠償請求において、過失相殺の適用の可否が争点となった際の根拠となる。実務上、使用者責任(民法715条)と同様の枠組みで過失相殺が肯定されることを示しており、答案上は「公平の理念」を媒介として、特別法上の賠償責任にも過失相殺が及ぶことを論理付ける際に有用である。
事件番号: 昭和42(オ)819 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
(省略)