自動車事故において被害者の過失が競合したがなお加害者に過失ありとされた事例
判旨
不法行為による損害賠償請求において、被害者側にも過失が認められる場合であっても、加害者は直ちに免責されるものではなく、過失相殺として損害賠償額の算定に際して斟酌されるにとどまる。
問題の所在(論点)
被害者の過失が加害者の過失と並んで事故の発生原因となっている場合に、加害者の損害賠償責任そのものが否定されるのか、あるいは損害賠償額の減額(過失相殺)にとどまるのかが問題となる。
規範
不法行為(民法709条、715条等)に基づく損害賠償において、被害者の過失が加害者の過失と競合して事故が発生したとしても、それによって加害者の責任が当然に否定されるものではない。被害者の過失は、損害賠償の額を定めるに際して斟酌の対象となる(民法722条2項の過失相殺)。
重要事実
上告人の被用者Dが運転する車両による事故により、被害者Eが死亡した。本件事故はDの過失に基づいて惹起されたものであるが、同時に被害者E側にも過失が競合していた。上告人は、被害者側の過失を理由に責任の存否を争い上告した。
あてはめ
本件において、事故が上告人の被用者Dの過失によって発生した事実は認められる。これに対し、被害者亡Eの過失が競合しているとしても、その一事をもって上告人の不法行為責任が消滅するとは解されない。原審は、被害者Eの過失を損害賠償額の算定において適切に斟酌しており、この判断手法は民法の過失相殺の法理に照らし正当である。したがって、上告人の責任を認めた上で過失相殺を行った原判決に違法はない。
結論
被害者に過失がある場合でも加害者の責任は免除されず、過失相殺として賠償額が減額されるにとどまる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
損害賠償請求の事案において、被害者側の過失を理由に責任を全面的に否定しようとする主張を排斥し、過失相殺による解決を促す際の根拠として機能する。司法試験の答案上は、過失相殺(722条2項)の適用場面を確認する際の基礎的な法理として引用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1246 / 裁判年月日: 昭和37年7月3日 / 結論: 棄却
債務不履行による損害賠償につき、債権者に過失があるとしてこれを斟酌して損害賠償額を算定する場合、必ずしも損害額を折半して算定しなければならないものではない。