定款所定の会社の目的が、「一、金銀銅及び一般金属鉱物の採掘及びその売買、一、石炭及び金属土石の採掘及びその売買、一、鉱山の調査鑑定及び鉱物の分析、一、石炭液化事業並びに有用鉱物の製煉及びその売買、一、右各項に附帯する一切の業務」である会社が後記(判決理由参照)事実関係の下になした床板の売却は、右会社の目的の範囲内の行為と認めるのが相当である。
会社の目的の範囲内の行為と認むべき一事例
判旨
会社の目的の範囲は、定款に定められた目的自体だけでなく、事業遂行に客観的・抽象的に必要な行為をも包含する。会社の維持に必要であれば、定款に直接記載のない取引も目的の範囲内に含まれる。
問題の所在(論点)
定款に直接記載のない行為(床板の売買)が、会社の権利能力の範囲を定めた「目的の範囲内」(民法34条、旧商法等)に含まれるか。
規範
会社は定款に定めた目的の範囲内において権利能力を有するが、この「目的の範囲」には、定款記載の目的自体に包含されない行為であっても、目的たる事業を遂行するに必要な行為を包含する。その必要性は、定款記載の目的自体から観察し、客観的・抽象的に必要であるか否かの基準によって決すべきである。
重要事実
上告会社が行った床板の売買契約について、当該行為が会社の定款に定められた目的の範囲外であり、権利能力を欠く無効なものであるかが争われた。上告会社側は、床板の売買は定款の目的自体には該当しない旨を主張した。
あてはめ
本件における床板の売買は、定款記載の目的そのものではない。しかし、会社を維持するために必要である場合には、本来の目的との関連において、客観的・抽象的に見て会社の目的を遂行するに必要な行為となり得る。本件では、これを否定すべき特段の事情は認められず、事業遂行に資する行為として目的の範囲内に含まれると解するのが相当である。
結論
床板の売買は会社の目的の範囲内に属し、会社はその行為について権利能力を有する。したがって、本件契約は有効である。
実務上の射程
会社の権利能力の範囲を広汎に認めたリーディングケースである。答案上は「客観的・抽象的に必要」というキーワードを明示し、具体的な取引内容が定款の事業内容を遂行する上で間接的に役立つかという観点であてはめを行う。取引の安全を図るため、個別の主観的な意図ではなく外形的に判断する点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和28(オ)1129 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の目的の範囲外の行為であるからといって、直ちに取引相手方の過失を推定すべきではなく、法人の役員による背任行為について相手方が悪意又は重過失でない限り、当該相手方に法人の目的等に照らした過失があるとはいえない。 第1 事案の概要:上告会社(法人)の訴外役員Dが、被上告人との間でダイヤ等の売買契約…