弁護士法第七二条本文前段に抵触する委任契約は、民法第九〇条に照して無効である。
弁護士法第七二条本文前段に抵触する委任契約の効力。
弁護士法72条,民法90条
判旨
弁護士でない者が、報酬を得る目的で他人の債権取立を委任され、その目的達成のために訴訟提起や和解等の事務を代行する契約は、反復継続の意思(業とする場合)の有無を問わず、弁護士法72条に抵触し、公序良俗(民法90条)に反して無効である。
問題の所在(論点)
非弁護士が報酬を得る目的で他人の債権取立や訴訟事務の代行を請け負う契約を締結した場合、それが「業として」行われるものでなくとも、弁護士法72条に抵触し、民法90条により無効となるか。
規範
弁護士資格を有しない者が、報酬を得る目的で訴訟事務や債権取立、和解交渉等の法律事務を代行することを内容とする契約を締結することは、弁護士法72条本文に抵触する。このような行為は、たとえ「業として(反復継続の意思をもって)」行われる場合に限らず、当該契約自体の内容が同法の禁止する事務の委託にあたる以上、民法90条に基づき無効となる。
重要事実
上告人(非弁護士)は、被上告人の先代Dとの間で、Dの有する債権の取立を委任された。その内容は、取立の目的達成のために弁護士を選任すること、訴訟提起、仮差押・仮処分の申請、および和解による解決一切を行う権限を含むものであった。また、取立に成功した場合には、回収額から費用を控除した残額の半額を報酬として受取ることとされていた。
あてはめ
本件契約は、弁護士でない上告人が、報酬を得る目的で他人の債権取立を委任され、その遂行のために訴訟や和解などの法律事務を包括的に引き受けるものである。このような事務は、弁護士法72条が弁護士以外の者に禁止する法律事務の取扱いにほかならない。たとえ上告人がこのような行為を反復継続する意思(業とする実態)を持っていなかったとしても、本件契約自体が同法の趣旨を著しく没却するものである以上、法秩序に反するといえる。
結論
本件契約は弁護士法72条に抵触し、民法90条により無効である。したがって、上告人の報酬請求等は認められない。
実務上の射程
非弁護士による法律事務の受託契約の有効性が争われる事案における基本判例である。「業として」という要件を欠く場合であっても、公序良俗違反による無効を導くロジックとして活用できる。特に債権回収代行や訴訟コンサルティング等の名目で行われる契約の効力を否定する際の決定的な根拠となる。
事件番号: 昭和37(あ)673 / 裁判年月日: 昭和39年2月28日 / 結論: 棄却
弁護士法第七二条前段の罪は、弁護士でない者が法定の除外事由がないのに、報酬を得る目的をもつて、同条前段所定の訴訟事件等に関して、鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うことにより成立し、業としてこれらの法律事務を取り扱うことを要しない。
事件番号: 昭和36(あ)2883 / 裁判年月日: 昭和37年10月4日 / 結論: 棄却
弁護士でない者が報酬を得る目的で、原判示の事情のもとで債権者から債権の取立の委任を受けて、その取立のため請求、弁済の受領、債務の免除等の諸種の行為をすることは、弁護士法第七二条の、「その他一般の法律事件」に関して、「その他の法律事務」を取り扱つた場合に該当する。