株式会社の設立を計画発起した者が、未だ設立登記をしないうちに、右会社の代表取締役として、第三者との間に、会社設立に関する行為に属しない契約を締結した場合、その者は、右第三者に対し、民法第一一七条の類推適用によつて責に任ずべきである。
設立登記未了の会社の代表取締役として契約を締結した者の責任。
民法117条,商法57条
判旨
設立登記前の株式会社を代表して締結された設立に関する行為以外の契約について、民法117条を類推適用し、署名した者が無権代理人と同様の責任を負うことを認めた。
問題の所在(論点)
設立登記前の会社の代表者として、設立に関する行為以外の契約を締結した個人が、民法117条の類推適用により無権代理人としての責任を負うか。
規範
民法117条は、代理権があると信じて契約した相手方の保護を目的とする規定である。したがって、未だ存在しない会社の代表者として契約を締結した場合、本来の無権代理人には当たらないとしても、相手方保護の観点から同条を類推適用し、当該契約を締結した者がその責任を負うべきである。
重要事実
上告人らはA整練株式会社の設立を計画し、昭和30年9月12日に設立登記を完了した。しかし、上告人はこれに先立つ同年3月、設立手続未了で登記もなされていない同社の代表取締役として、被上告人との間で本件契約を締結した。この契約は、会社の設立に関する行為(開業準備行為等)には該当しないものであった。
あてはめ
本件契約は設立登記前になされており、かつ性質上「会社の設立に関する行為」とは認められない。そのため、設立後の会社に当然に効果が帰属することはない。上告人は、実在しない会社の代表者として振る舞い契約を締結しており、これは実在する他人の代理権がないまま契約する無権代理人と類似の関係にある。相手方である被上告人の信頼を保護する必要性は民法117条が想定する事態と共通する。したがって、同条の類推適用により、代表者として署名した上告人本人が履行または損害賠償の責任を負うこととなる。
結論
上告人は、民法117条の類推適用に基づき、本件契約上の責任を負う。上告を棄却する。
実務上の射程
設立中の会社の行為として会社に帰属させられない「開業準備行為」等の責任追及の場面で有効。相手方の善意無過失等の要件についても、民法117条の規定に準じて判断されることとなる。
事件番号: 昭和42(オ)1384 / 裁判年月日: 昭和43年9月3日 / 結論: 棄却
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