罪数に関する法令適用の誤りがあるが,刑訴法411条を適用すべきものとは認められないとされた事例
刑法45条前段,刑訴法411条
判旨
被告人が一定の期間内に反復して行った多数の詐欺行為について、確定判決を挟んでいない場合、これらを一つの包括一罪としてではなく、刑法45条後段の併合罪(または各個の罪)として処断すべきである。
問題の所在(論点)
数年にわたり200回以上に及ぶ多数の振込入金を行わせた詐欺行為について、これらを包括して一罪とすべきか、それとも併合罪(別罪)として処断すべきかが問題となる。
規範
同一の被害者に対し、同様の手口で長期間にわたって反復継続された詐欺行為であっても、各振込入金等の行為ごとに独立性が認められる場合には、それらを一括して包括一罪とするのではなく、刑法45条の併合罪として処断するのが相当である。
重要事実
被告人は、平成19年1月12日から平成22年1月26日までの間に145回、さらに平成22年2月22日から平成25年9月27日までの間に70回、合計215回にわたり、相手方を欺いて振込入金させた。第1審および原審は、これらを大きく二つのグループ(判示第1および第2)に分けて併合罪として処断した。
あてはめ
本件では、約6年半にわたり断続的に合計215回の振込が行われている。判決文からは各行為の具体的な個別性は詳らかではないが、最高裁は第1審が判示第1(145回分)と判示第2(70回分)を「併合罪」として処断した点について、法令の適用に誤りがあると指摘した。これは、判示第1の内部および判示第2の内部においても、それぞれの振込行為が独立した罪を構成し、全体として併合罪の関係にあることを示唆している(ただし、結論として刑訴法411条の破棄事由には当たらないとされた)。
結論
被告人が長期間にわたり反復して行った各詐欺行為は、包括一罪ではなく、各行為ごとに罪が成立し、それらは刑法45条の併合罪として処断されるべきである。
実務上の射程
常習一罪や包括一罪の成否が争点となる事案において、行為の個別性が強い(入金回数が多い、期間が長い等)場合には、安易に一罪とせず併合罪として処理すべきことを示す。答案上は、罪数論において、単一の犯意に基づき連続して行われたか、あるいは各行為が独立した法益侵害を有するかを検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和34(あ)1246 / 裁判年月日: 昭和37年2月1日 / 結論: 棄却
詐欺の目的をもつて「財政経済会」の名称で匿名組合を設立し、一、三四八名の出資者に対し各別に欺罔手段を施し、三、七五一回にわたり金員、株券などを騙取した場合においては、出資者一人ごとに独立の詐欺罪を構成する。