公判請求書に公訴事実として引用された司法警察官の意見書に犯罪事実として単に被告人が実在しない架空人員をもつて一定の期間、一定の主要食糧を不正に受配した旨の記載があるだけで、犯罪の回数の記載もなければ犯意係属とも記載されておらず、また右公判請求書若しくは意見書には犯罪明細表の添附がないばかりでなく記録添附の始末書、聴取書等にも右意見書に記載されている程度の犯罪事実の記載しかない場合には、右公訴にかかる犯罪は、併合罪または連続犯として起訴されたものではなく包括一罪として起訴されたものと認めるのが相当である。
包括一罪として起訴され併合罪または連続犯として起訴されたものと認められない一事例
旧刑訴法288条,旧刑訴法290条,旧刑訴法291条,刑法45条,改正前の刑法55条
判旨
公訴事実に犯罪の回数や犯意継続の記載がなく、明細表等の添付もない場合であっても、一定期間内の不正受配総量を一括して記載しているときは、併合罪や連続犯ではなく包括一罪として起訴されたものと解すべきである。
問題の所在(論点)
数回にわたる不正受配行為について、犯罪の回数や個別の態様を特定せず期間内の総量を記載して起訴した場合、公訴の範囲はどのように解されるか。併合罪あるいは連続犯として個別的に特定される必要があるか、あるいは包括一罪として受理され得るかが問題となる。
規範
公訴事実の記載において、数個の行為が同一の罪名に触れる場合であっても、個々の犯罪の回数や特定の犯意の継続が明示されず、一定期間における被害総量等が包括的に示されているときは、検察官の意思として包括一罪として構成されたものと解する。
重要事実
被告人は、昭和22年3月26日から同23年5月25日までの427日間にわたり、実在しない架空の2名分として主要食糧303.17kgを不正に受配したとして起訴された。公判請求書(起訴状に相当)には司法警察官意見書の犯罪事実が引用されていたが、そこには犯罪の回数の記載も犯意継続の記載もなく、犯罪の明細表の添付もなかった。
あてはめ
本件では、公訴事実に「427日間(延日数854日)にわたり主要食糧三〇三瓩一七〇瓦を不正に受配した」旨の記載があるのみで、具体的な回数や各回ごとの犯意の有無に関する主張が含まれていない。また、明細表や始末書等にも具体的な各個の犯罪事実は示されていない。このような記載形式は、個別の行為を独立した罪として構成する併合罪や連続犯の主張ではなく、一連の行為を全体として一つの罪と捉える包括一罪の主張であるといえる。
結論
本件公訴は包括一罪として起訴されたものと認められるため、個別の犯罪回数等の記載を欠いても適法であり、原判決に違法はない。
実務上の射程
数個の同種行為が繰り返される事案において、検察官が包括一罪として構成・起訴した場合には、訴因の特定(刑訴法256条3項)の程度は緩和され、総量的な記載でも足りることを示唆する。実務上、訴因の特定の要否を論じる際、包括一罪の構成が許容されるかどうかの判断基準として機能する。
事件番号: 昭和22(れ)206 / 裁判年月日: 昭和23年4月8日 / 結論: 棄却
連續一罪を構成する數個の詐欺の事實を判示するに當つては、必ずしも各個の犯罪行爲を逐一個別的に明確に説示することを要するものと言うことはできない。その行爲の内容の表示は、同一罪質を有する複數のものであることを理解し得べき程度に具體的になされるをもつて足るのである。すなわち、行爲の始期及び終期を明かにし、各個の行爲に共通す…