原判決が是認した第一審判決の事実摘示は、本件二一回の詐欺の各犯罪事実につき、犯行の年月日、犯行の場所、被害者、被欺罔者、詐取した商品、その価格を、各犯罪行為毎に具体的に一覧表として記載しており、欺罔の方法は単純でありかつ同一方法であるので、これを一括して理由の本文中に記載しているのであるから、右本文と一覧表と相まつて、本件各犯罪行為はそれぞれ他の行為より区別し得る程度に特定しているものというべく、併合罪関係に立つ各犯罪行為の記載としては欠けるところがない。
併合罪関係に立つ各犯罪行為の判示方法。
刑訴法335条1項,刑法45条
判旨
併合罪関係にある多数の犯罪事実について、犯行の年月日、場所、被害者、被欺罔者、詐取した商品及び価格を一覧表で具体的に特定し、欺罔方法を一括して記載する手法は、各行為を他と区別し得る程度に特定しているといえる。
問題の所在(論点)
多数の詐欺行為が併合罪として起訴された場合において、各犯罪事実の特定に際し、一部の構成要件要素(欺罔方法)を一括して記載しつつ、他の要素を一覧表形式で示す手法は、犯罪事実の特定として適法か。
規範
判決における犯罪事実の摘示(刑事訴訟法335条1項)は、併合罪関係に立つ各犯罪行為がそれぞれ他の行為と区別し得る程度に具体的に特定されていれば足りる。
重要事実
被告人が21回にわたる詐欺を行った事案において、第一審判決は、犯行の年月日、場所、被害者、被欺罔者、詐取した商品、価格について、各犯罪行為ごとに具体的に一覧表にまとめて記載した。一方で、欺罔の方法については、手法が単純かつ同一であったため、これらを一括して判決理由の本文中に記載した。
あてはめ
本件では、判決理由の本文と一覧表が一体となって各犯行を特定している。具体的には、日時、場所、対象、被害といった個別要素が一覧表で各行為ごとに詳細に区別されている。これに加え、欺罔方法が共通かつ単純なものである場合には、これを一括して記載しても、各犯罪行為が他の行為から混同されるおそれはない。したがって、各犯罪事実は他と区別し得る程度に特定されていると評価できる。
結論
本件の事実摘示は、各犯罪行為を区別し得る程度に特定しており、適法である。
実務上の射程
多数の同種犯行(詐欺や窃盗等)が併合罪となる場合の判決書の簡略化手法を肯定したものである。実務上、訴因の特定(刑訴法256条3項)の議論とパラレルに、判決における罪となるべき事実の特定レベルを判断する際の指標として活用できる。
事件番号: 昭和38(あ)2437 / 裁判年月日: 昭和39年4月23日 / 結論: 棄却
本件公訴事実は同一被害者に対し、一定期間反覆継続して行われた単一意思の発現と認めらるる同種の詐欺行為を包括して、一個の詐欺罪とし、八名の被害者につき各個の訴因毎に、被害者、詐欺の行われた日時(始期と終期)、場所及び被害物件の総計その価格の総額等を明示しているのであるから、詐欺罪の訴因の特定について欠くることなく、右一罪…