判旨
数個の犯罪事実について数多の証拠標目を一括して掲げて証拠説明をしても、判決文と記録を照合してどの証拠でどの事実を認めたかが明白である限り、違法ではない。
問題の所在(論点)
複数の犯罪事実を認定する際、証拠の標目を個々の事実ごとに区別せず一括して掲げる証拠説明の方式は、刑事訴訟法上の判決の方式として許容されるか。
規範
判決における証拠説明の方式については、数個の犯罪事実に対し多数の証拠標目を一括して掲示する手法(一括挙示)を採ることも許容される。具体的には、判決文と訴訟記録を照らし合わせることで、各認定事実に対応する証拠が何であるかを客観的に特定・理解しうる程度に明白であれば、証拠説明として必要かつ十分であり、違法とはならない。
重要事実
被告人の数個の犯罪事実を認定した第一審判決に対し、弁護人は、複数の事実認定について採用証拠の区別を示さず漫然と証拠の標目を一括して列記したことは違法であると主張した。原判決(二審)はこれを是認したが、上告審において証拠説明の仕方が判例違反にあたるかどうかが争点となった。
あてはめ
本件では、第一審判決が複数の犯罪事実の認定にあたり、証拠の標目を一括して列記する手法を用いている。しかし、判決文の記載内容と実際の訴訟記録を仔細に照合・検討すれば、どの証拠に基づいてどの事実が認定されたのかを判別することは可能である。このような状況下においては、証拠の区別を明示的に示さない形式的な一括挙示であっても、実質的に事実認定の根拠を不明にするものではなく、論理法則や経験則に反する認定も認められない。
結論
数個の事実に対して証拠を一括挙示しても、記録等に照らして証拠と事実の対応関係が明白であれば違法ではない。したがって、本件の証拠説明の仕方に違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和26(あ)1977 / 裁判年月日: 昭和26年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の犯罪事実に対し、証拠の標目を一括して挙示しても、判文と記録を照合してどの証拠がどの事実を認定したか明白であれば、証拠挙示に違法はない。 第1 事案の概要:被告人の二個の犯罪事実を認定した第一審判決に対し、被告人が「証拠の標目を各事実ごとに分けることなく一括して挙げている点は、東京高等裁判所の…
実務上の射程
刑事訴訟判決の構成における「証拠の標目」の記載程度に関する射程を持つ。実務上、複雑な事案において個別の事実ごとに証拠を細分化して挙示しない「一括挙示」の適法性を担保する根拠として機能するが、あくまで「対応関係が明白であること」が要件となる。
事件番号: 昭和25(あ)1616 / 裁判年月日: 昭和27年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決において数個の犯罪事実につき証拠の標目を一括挙示することは、記録に照らして証拠と認定事実の対応関係が明白であれば、刑訴法335条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が複数の犯罪事実について有罪判決を受けた際、裁判所が判決文において、それぞれの犯罪事実に対応する証拠を個別に分けること…