判旨
判決において証拠の標目として多数の供述記載を挙げつつ「判示事実に反する部分を除く」と判示することは、抽象簡略に失するが、事実認定の基礎となる部分が客観的に区別可能で、かつそれらを総合して事実認定が可能であれば違法ではない。
問題の所在(論点)
判決書において証拠の一部を採用し一部を排除する際、「判示事実に反する部分を除く」との包括的な引用方法を用いることが、刑事訴訟法上の証拠の挙示として許容されるか。
規範
判決における証拠の挙示において「判示事実に反する部分を除く」との限定を付す手法は、原則として抽象簡略に失する不適切な説示である。しかし、記録の検討により、(1)判示事実に反する部分と反しない部分を客観的に区別でき、(2)両者が一体不可分ではなく、(3)反しない部分を総合して判示事実の認定が合理的に可能である場合には、直ちに訴訟法違反(理由不備等)とはならない。
重要事実
被告人が上告した事案において、原判決は有罪判決の証拠の標目として多数の供述記載を列挙した。その際、各証拠について個別に採用箇所を特定することなく、包括的に「(以上孰れも判示事実に反する部分を除く)」との限定を付して事実認定の証拠とした。弁護人は、このような証拠の挙示方法は不当であり訴訟法に違反すると主張した。
あてはめ
本件において、原判決の説示は抽象簡略に失する。しかし、記録に照らせば、挙げられた供述記載のうち判示事実に反する部分と反しない部分は判別可能である。また、それらは一体不可分のものではなく、反しない部分のみを抽出して総合すれば、原判決が認定した罪となるべき事実を十分に肯定することができる。したがって、証拠の摘示方法として不十分な点はあっても、判決の結果に影響を及ぼすような違法は認められない。
結論
本件のような証拠の引用方法は、判別可能性および証拠の総合的評価が可能な限りにおいて、訴訟法違反には当たらない。
実務上の射程
判決書における「証拠の標目」の記載方法に関する射程。実務上、証拠の一部採用(部分採用)は認められるが、本判決は「反する部分を除く」という簡略な記載を「抽象簡略」と批判しつつも、実質的な認定の合理性が保たれている限り有効としたもの。答案上は、理由不備(刑訴法378条4号)の成否を論じる際の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)6633 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみで有罪を認定することは憲法38条3項及び刑訴法319条2項に反するが、共犯者の供述などの証拠が存在し、それが自白の真実性を保障するに足りる場合には、補強証拠として自白に基づく有罪認定が許容される。 第1 事案の概要:被告人が詐欺の罪で起訴された事案。原審は、被告人の自白以外に、A及…