判旨
控訴審判決が、第一審判決の事実及び証拠を引用して同一の認定をした場合には、控訴理由である事実誤認の主張について明示的な判断をしていなくても、実質的に事実誤認ではないと判断したものと解される。
問題の所在(論点)
控訴審判決が控訴理由である事実誤認の主張に対し、明示的な判断を示さずに第一審の事実認定を引用した場合、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(刑事訴訟法上の訴訟手続の法令違反)に該当するか。
規範
控訴審判決が第一審判決の事実及び証拠を引用して同一の事実認定を行った場合、控訴趣意に含まれる事実誤認の主張については、明示的な排斥の判断が示されていなくとも、実質的に当該主張を棄却したものと解するのが相当である。
重要事実
被告人が公訴の適否を争い、弁護人が憲法違反及び訴訟法違反(判断遺脱)を理由に上告した事案である。原審(控訴審)は、弁護人が主張した事実誤認の論旨について判決文中で明示的には判断を示していなかったが、第一審判決の事実及び証拠を引用し、第一審と同様の事実認定を行っていた。
あてはめ
本件において、原判決は所論の事実誤認の論旨について直接的な言及はしていない。しかし、原審は第一審判決が認定した事実及びその根拠とした証拠をそのまま引用して同一の認定を下している。このような認定手法をとることは、前提として第一審の認定に誤りがないことを確認し、被告人側の事実誤認の主張を実質的に否定したことを意味する。したがって、明文による反論がなくとも判断の遺脱があったとはいえない。
結論
原判決に判断遺脱の訴訟法違反は存しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
実務上、控訴審が第一審判決を支持する際の判決書の簡略化(引用)が許容される範囲を示す。答案上では、判決書に必要な「理由」の程度を検討する際や、判断遺脱の有無を論じる場面で、実質的な判断がなされているか否かの基準として活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)1442 / 裁判年月日: 昭和31年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状に記載された欺罔行為の内容と、判決で認定された事実との間に相違があっても、訴因の同一性が失われず、かつ被告人の防御に実質的な不利益を及ぼさない場合には、訴因変更の手続きを経ることなく当該事実を認定できる。 第1 事案の概要:被告人が詐欺罪で起訴された際、起訴状には被害者Aに対して弄した「虚言…