判旨
公判調書における法令の引用ミスについて、それが文脈や状況から明らかな誤記と認められる場合には、適法な手続が欠如していることにはならず、憲法違反や上告理由を構成しない。
問題の所在(論点)
公判調書に本来適用されるべき条文とは異なる条文が記載されている場合、その記載が明らかな誤記であれば、手続の適法性に影響を及ぼすか。また、それが憲法違反の上告理由となり得るか。
規範
公判調書等の裁判書類における法令の引用につき、誤記の内容が書面全体の記載から判断して特定の条文の誤記であることが客観的に明らかである場合には、当該手続は当該特定の条文に基づいて適法に行われたものと解される。
重要事実
刑事被告人の第一審公判調書において、本来であれば冒頭手続の権利告知等に関する「刑事訴訟法291条2項」と記載すべき箇所に、起訴状の謄本送達に関する「刑訴法271条2項」と印刷されていた。弁護人はこの記載を根拠に、適法な手続が執られておらず憲法違反であるとして上告した。
あてはめ
本件第一審公判調書に「刑訴271条2項」と印刷されている点は、当時の手続の流れや調書の前後関係に照らせば、本来予定されていた「刑訴291条2項」の明らかな誤記であると認められる。したがって、実質的には291条2項所定の手続が行われたと評価でき、手続上の瑕疵は存在しないといえる。ゆえに、違憲の主張はその前提を欠く。
結論
公判調書の記載が明らかな誤記である以上、手続に違憲の事由はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
手続の形式的瑕疵(書類の誤記)が争点となる場合に、その瑕疵が「明らかな誤記」として実質的な適法性を維持できるかという判断枠組みを示す。司法試験においては、訴訟手続の法令違反を主張する際、書面の記載のみならずその実質的な意味を検討する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4300 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に明らかな誤記がある場合、その記載は本来あるべき適法な手続が行われたものと解釈され、憲法違反や重大な訴訟手続の法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:刑事被告人の公判において、作成された公判調書に「裁判官は追起訴状を朗読した」との記載がなされていた。弁護人は、起訴状朗読は検察官が行うべ…