判旨
公判調書に明らかな誤記がある場合、その記載は本来あるべき適法な手続が行われたものと解釈され、憲法違反や重大な訴訟手続の法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
公判調書に、本来検察官が行うべき起訴状朗読を裁判官が行った旨の誤記がある場合、当該手続は違憲または重大な訴訟法違反(刑訴法405条、411条)に該当するか。
規範
公判調書の記載に明白な誤記が認められる場合、その記載内容を前提とした手続の不備を理由に違憲や訴訟法違反を主張することはできない。調書の更正や前後の文脈から真実の手続経過が認定できる限り、適法な手続が履行されたものとみなされる。
重要事実
刑事被告人の公判において、作成された公判調書に「裁判官は追起訴状を朗読した」との記載がなされていた。弁護人は、起訴状朗読は検察官が行うべきであり、裁判官が行ったとする調書の記載は手続上の重大な瑕疵であるとして、憲法違反および訴訟法違反を理由に上告した。
あてはめ
本件の公判調書における「裁判官は追起訴状を朗読した」との記載は、原判決の説示によれば、本来「検察官は追起訴状を朗読した」と記載すべきところを誤って記載した明白な誤記であると認められる。したがって、実際には検察官によって適法に起訴状の朗読が行われたものと解されるため、弁護人が主張する前提(裁判官が朗読したという事実)自体が欠如している。
結論
本件上告は理由がなく棄却される。公判調書の単なる誤記は、実質的な訴訟法違反の主張に帰し、上告理由には当たらない。
実務上の射程
公判調書の証明力(刑訴法52条)に関連し、記載内容が客観的事実や前後関係に照らして明白な誤記といえる場合には、その文言通りの手続が行われたものとして争うことは困難であることを示している。実務上、調書の記載内容の正確性を争う際は、それが「明らかな誤記」の範囲内か、あるいは手続の本質を左右する実質的な瑕疵かを区別する必要がある。
事件番号: 昭和26(あ)3126 / 裁判年月日: 昭和27年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書における法令の引用ミスについて、それが文脈や状況から明らかな誤記と認められる場合には、適法な手続が欠如していることにはならず、憲法違反や上告理由を構成しない。 第1 事案の概要:刑事被告人の第一審公判調書において、本来であれば冒頭手続の権利告知等に関する「刑事訴訟法291条2項」と記載すべ…