判旨
起訴状の朗読は公判調書の必要的記載事項ではなく、その記載がないからといって直ちに朗読の事実を否定することはできない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法291条1項が定める「検察官による起訴状の朗読」について、公判調書にその旨の記載がない場合に、直ちに当該手続が欠如していたものとみなされるか。
規範
刑事訴訟法、刑事訴訟規則の諸規定に照らし、特定の訴訟手続が公判調書の必要的記載事項(刑訴規則44条)とされていない場合、調書にその記載がないことのみをもって、当該手続が実施されなかったと断定することはできない。
重要事実
被告人が、起訴状の朗読が行われなかったとして法令違反を主張し上告した。公判調書には起訴状朗読に関する記載が欠けていた。
あてはめ
刑事訴訟規則44条は公判調書の記載事項を定めているが、起訴状の朗読は同条に掲げられた必要的記載事項には該当しない。したがって、調書に記載がないことを根拠として、直ちに朗読の事実を否定し、手続上の違法があると結論付けることは独断にすぎず、許容されない。
結論
起訴状の朗読の記載が公判調書にないからといって、直ちに朗読の事実を否定することはできない。
実務上の射程
公判調書の記載と手続の有無に関する判断枠組み。規則44条1項に列挙されていない事項(起訴状朗読や人定質問など)については、調書に記載がなくても「不実施」の推認は働かないことを示す。答案では、調書の証拠力(刑訴法52条)の限界を論証する際に、必要的記載事項か任意的記載事項かを区別する根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)4300 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に明らかな誤記がある場合、その記載は本来あるべき適法な手続が行われたものと解釈され、憲法違反や重大な訴訟手続の法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:刑事被告人の公判において、作成された公判調書に「裁判官は追起訴状を朗読した」との記載がなされていた。弁護人は、起訴状朗読は検察官が行うべ…