所論の起訴状朗読等は昭和二七年二月一日以降公判調書の必要的記載事項でなくなつたのであるから所論の第一審における公判調書にその記載のない一事をもつて直ちにその手続が行われなかつたことにはならない。
公判調書に起訴状朗読等の記載のない場合その手続が行われなかつたとみるべきか
刑訴法48条,刑訴規則44条
判旨
公判調書に起訴状朗読等の記載がないからといって、直ちにその手続が行われなかったと解することはできず、刑事訴訟法上の必要的記載事項の変更に留意すべきである。
問題の所在(論点)
公判調書に起訴状朗読等の記載がない場合、直ちに当該手続が行われなかったとみなされ、刑事手続上の違法が生じるか(公判調書の証明力の範囲)。
規範
公判調書の記載と手続の適法性に関する規範として、特定の事項が公判調書の必要的記載事項から除外された場合、その事項の記載がないことのみをもって、当該手続が実施されなかったと断定することはできない。
重要事実
被告人が、第一審の公判調書に起訴状の朗読等の記載がないことを理由に、手続が適法に行われなかったと主張して憲法違反および判例違反を訴え上告した事案。なお、昭和27年の法改正等により、当該事項は公判調書の必要的記載事項ではなくなっていた。
あてはめ
起訴状朗読等は昭和27年2月1日以降、公判調書の必要的記載事項ではなくなっている。したがって、公判調書にこれらの記載がないという一事をもって、直ちにその手続が行われなかったと認定することは論理的に不可能であり、手続が適法に行われたとの前提を覆すに足りない。また、記録を精査しても刑訴法411条を適用して判決を取り消すべき事由は認められない。
結論
公判調書に記載がないことをもって直ちに手続不実施とはいえず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟規則等により公判調書の必要的記載事項が限定されたことに伴い、刑訴法52条(公判調書の証明力)の適用範囲を画したもの。答案上は、調書の記載欠落を理由に手続違背を主張する際、当該事項が現在も必要的記載事項であるかを確認した上で、必要的記載事項でない場合には本判例を引用し、不記載が直ちに不実施を意味しない旨を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和28(あ)1089 / 裁判年月日: 昭和29年10月19日 / 結論: 棄却
刑訴規則第四四条は、第一審における公判調書の記載要件であつて、控訴審における公判調書の記載要件ではない。