所論上告趣意書提出最終日の通知書は被告人が釈放された際に申出た帰住地「福岡市a料理屋『A』隣」に宛て書留郵便に付して送達したものであるから適法な送達があつたものというべきである。
上告趣意書提出最終日の通知書が適法に送達されたとみなされる事例
刑訴規則266条,刑訴規則236条,刑訴規則63条
判旨
勾留に際して被告人の陳述を録取した調書が記録に編綴されていないとしても、その事実のみをもって直ちに被告人の陳述を聴かずに勾留した(刑訴法61条・207条1項違反)と断定することはできない。
問題の所在(論点)
勾留の裁判において、被告人の陳述を録取した調書が記録に存在しない場合に、刑事訴訟法61条(および207条1項)が定める「陳述を聴く」手続を欠いた違法な勾留とみなされるか。
規範
勾留の裁判に際し、被告人に対し事件を告げこれに関する陳述を聴くべき(刑事訴訟法61条)との手続的要請は、調書の作成および記録への編綴という形式的事実のみによって判断されるべきものではなく、実質的にその機会が与えられたか否かによって判断される。
重要事実
被告人が勾留された際、その陳述を録取した調書が訴訟記録に編綴されていなかった。このため被告人は、裁判所が被告人の陳述を聴くという法定の手続を経ずに勾留を決定したものであり、憲法および刑事訴訟法に違反する不当な勾留であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、確かに被告人の陳述を録取した調書は記録に編綴されていない。しかし、調書の不存在という一事をもって、裁判官が直接被告人の陳述を聴取する手続を全く経なかったと推認することはできない。記録上、陳述聴取の機会が実質的に剥奪されたと認めるに足りる特段の事情も見当たらない。したがって、手続違反を前提とする違憲主張はその前提を欠くといえる。
結論
勾留調書の記録への不編綴のみでは、陳述聴取手続を欠いた違法があるとはいえない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
勾留手続の適法性が争われる場面で、書面の不備(調書の不存在)が直ちに手続的権利の侵害を意味するものではないことを示す。答案上は、勾留の適法性を検討する際の「手続の履践」の評価において、形式的記録の有無だけでなく実質的な手続実施の有無を検討すべき根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)2098 / 裁判年月日: 昭和28年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人不在のまま公判が開廷されたとの主張について、記録上その事実が認められない場合には、弁護権の侵害等を理由とする違憲の主張は前提を欠き、上告理由にならない。 第1 事案の概要:被告人が公判において弁護人なしで審理が行われ、弁論の途中で弁護人が選任されたとして、憲法違反および訴訟手続の違法を理由に…