判旨
公判調書に検察官による起訴状朗読の記載が欠けている場合であっても、その一事のみをもって直ちに起訴状の朗読がなかったものと断定することはできない。
問題の所在(論点)
第一回公判期日における起訴状の朗読(刑事訴訟法291条1項)の有無が争点となった。具体的には、公判調書にその旨の記載がない場合に、直ちに手続の欠如として違法となるかが問題となった。
規範
公判期日における手続が適法に行われたか否かは、公判調書の記載に基づいて判断されるべきであるが(刑事訴訟法52条)、調書に特定の記載が欠落しているという消極的事実のみをもって、直ちに当該手続が不履行であったと擬制されるものではない。手続の存否は、記録全体に照らして総合的に判断されるべきである。
重要事実
被告人の上告審において、弁護人は第一審の第一回公判調書に検察官が起訴状を朗読した旨の記載がないことを指摘し、訴訟手続に法令違反があると主張した。一審公判調書には、立会検察官の氏名は記載されていたものの、起訴状朗読のプロセスに関する明示的な言及を欠いていた。
あてはめ
最高裁は、第一審第一回公判調書において立会検察官の記載があることを確認した。その上で、調書に「起訴状を朗読した」旨の記載を欠いている事実があったとしても、この一点のみをもって起訴状の朗読が行われなかったと結論付けることはできないと判示した。すなわち、消極的な記載の不備が直ちに手続不履行という実体的事実を証明するものではないと判断した。
結論
起訴状朗読がなされなかったとはいえない。したがって、手続違反を理由とする上告は棄却される。
実務上の射程
公判調書の証明力(刑訴法52条)に関する判断。調書に「記載がある」事項については強い証明力が認められるが、本来記載されるべき事項が「記載されていない」場合に、それが直ちに手続の不履行を意味するわけではないことを示している。実務上は、調書の不備を理由とした形式的な手続違背の主張を制限する射程を持つ。
事件番号: 昭和25(あ)2851 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審で主張されず、原判決で判断されなかった第一審訴訟手続の訴訟法違背の主張は、憲法31条違反を口実にするものであっても、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は第一審において、自己の供述調書(自白)の取調べや、裁判官による被告人質問の手続が行われた。被告人側は、これらの手続に違法が…