公判調書中に同公判に出席した検察官が起訴状を朗読したことの記載を欠くという一事をもつて起訴状の朗読がなかつたものとは言えない。
公判調書に起訴状朗読の記載を欠いた場合と起訴状朗読の有無
刑訴法52条,刑訴法291条1項,刑訴規則44条5号(昭和26年規則32号による改正前のもの)
判旨
公判調書に検察官による起訴状の朗読の記載が欠けている場合であっても、その一事のみをもって起訴状朗読の手続が欠如していたと断定することはできない。
問題の所在(論点)
公判調書に検察官による起訴状朗読の事実が記載されていない場合、刑事訴訟法52条(公判手続の証明)との関係で、当該手続が実施されなかったものとみなされるか。
規範
公判手続の適法性は公判調書によってのみ証明すべきであるが(刑事訴訟法52条)、調書に特定の訴訟手続の記載が欠落している場合、直ちにその手続が実施されなかったとみなされるわけではなく、他の記載や記録からその実施が認められる余地がある。
重要事実
被告人が刑事裁判において、第1審の公判調書を確認したところ、公判に出席した検察官が起訴状を朗読した旨の記載が欠落していた。弁護人は、起訴状の朗読(刑事訴訟法291条1項)がなされていない重大な手続違背があるとして、原判決の破棄を求めて上告した。
あてはめ
刑事訴訟法52条は公判調書の専証力を規定するが、記載の欠落が直ちに不実施を意味するものではない。本件においても、公判調書中に検察官が起訴状を朗読したことの記載を欠くという一事をもって、起訴状の朗読がなされなかったと断定することはできない。記録全体を考慮すれば、当該手続の不実施を前提とする主張は容認できない。
結論
公判調書の記載欠落のみをもって手続不実施とは言えず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法52条の「専証力」の限界を示す判例である。調書に「実施した」とある場合に不実施を証明することは制限されるが、逆に「記載がない」場合に不実施とみなす形式的な適用を否定している。答案上は、手続の瑕疵が主張された際の認定手法として言及し得る。
事件番号: 昭和27(あ)4463 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: 棄却
国選弁護人の選任者の原本は同人に送達され記録にはその写を綴りおくのであるから右写の裁判長の名下に押印がなくとも差支ない。