国選弁護人の選任者の原本は同人に送達され記録にはその写を綴りおくのであるから右写の裁判長の名下に押印がなくとも差支ない。
記録に編綴された国選弁護人選任書写の記載要件
刑訴規則29条
判旨
被告人の公判廷における身体不拘束は、刑事訴訟規則44条により公判調書の記載要件とされていない。また、国選弁護人選任書の写しに裁判長の押印がなくとも、選任の効力に影響はなく、手続上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
1. 公判廷における被告人の身体不拘束の事実が公判調書の必要記載事項(刑事訴訟規則44条)にあたるか。 2. 国選弁護人選任書の写しに押印がないことが、弁護人選任の効力を左右するか。
規範
1. 公判調書の記載事項は刑事訴訟規則44条1項各号に限定されており、公判廷において被告人の身体を拘束しなかった事実は同条の記載要件ではない。2. 国選弁護人の選任手続において、裁判記録に綴られる選任書の写しに裁判長の押印が欠けていても、原本が正当に送達され、実際に弁護活動が行われている限り、選任の効力に瑕疵はない。
重要事実
被告人が量刑不当を理由に、弁護人が憲法違反(実質は訴訟法違反)を理由に上告した。弁護人は、(1)公判調書に「公判廷において被告人の身体を拘束しない」旨の記載がないことから身体拘束があったと主張し、(2)記録上の国選弁護人選任書の写しに裁判長の押印がないことをもって選任の無効を主張した。
あてはめ
1. 刑事訴訟規則44条は公判調書の記載要件を定めているが、身体不拘束の事実はこれに含まれない。したがって、調書に記載がないことをもって直ちに身体拘束があったと推認することはできず、他に身体拘束を認める資料も存在しない。 2. 国選弁護人選任書の原本は本人に送達されており、裁判記録にはその写しを綴る運用となっている。この写しに押印がなくとも、現に選任された弁護人が公判で弁論を行っている以上、手続に違憲・違法の瑕疵があるとはいえない。
結論
本件各主張はいずれも前提を欠き、適法な上告理由に当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
公判調書の記載事項が限定的であることを確認する事例。実務上、調書の記載がないことをもって直ちに手続違背を主張することは困難であり、特段の事情がない限り、形式的な写しの不備も弁護権の侵害とは評価されない。
事件番号: 昭和25(あ)3117 / 裁判年月日: 昭和27年7月8日 / 結論: 棄却
原審が弁護人古明池為重の第一回公判期日の変更申請はこれを許容したが、第二回公判期日の変更申請はこれを許容しなかつたこと及び同弁護人が右公判期日に立ち会わなかつたとしても、右期日に新たに選任された国選弁護人によつて被告人自身が選任した古明池弁護人提出の控訴趣意書に基ずく弁論がなされたこと、その控訴趣意書の内容も特に新たな…