原審が弁護人古明池為重の第一回公判期日の変更申請はこれを許容したが、第二回公判期日の変更申請はこれを許容しなかつたこと及び同弁護人が右公判期日に立ち会わなかつたとしても、右期日に新たに選任された国選弁護人によつて被告人自身が選任した古明池弁護人提出の控訴趣意書に基ずく弁論がなされたこと、その控訴趣意書の内容も特に新たな事実証拠の取調を要する趣旨でもないときは訴訟手続に法令違反があるといえない。
控訴審における公判期日に、私選弁護人が出頭しない場合、国選弁護人を選任して弁論させることと訴訟手続に関する法令違反の有無。
刑訴法30条,刑訴法289条,刑訴法379条,刑訴法388条,刑訴法391条
判旨
裁判所が弁護人の公判期日変更申請を却下し、被告人が選任した弁護人が不在のまま国選弁護人により弁論が行われたとしても、被告人に不利益が生じていない場合には、訴訟手続の違法は認められない。
問題の所在(論点)
弁護人の公判期日変更申請を却下し、私選弁護人が不在の状態で国選弁護人により弁論を進行させた裁判所の措置は、被告人の弁護を受ける権利を侵害する訴訟手続の違法にあたるか。
規範
公判期日の変更申請を許容するか否かは裁判所の裁量に属する。もっとも、その裁量の行使にあたっては、被告人の防衛権や弁護権を不当に制限してはならない。手続の違法の有無は、変更を認めなかった結果として被告人に実質的な不利益を来したか否かという観点から判断される。
重要事実
控訴審において、私選弁護人が第1回公判期日の変更を申請し許可されたが、続く第2回公判期日の変更申請は却下された。当該期日に私選弁護人は立ち会わなかったが、新たに選任された国選弁護人が出頭した。国選弁護人は、私選弁護人が提出していた控訴趣意書に基づき弁論を行った。なお、控訴趣意書の内容は量刑不当を主張するものであり、新たな事実調べを要するものではなかった。
あてはめ
本件では、私選弁護人が不在であったものの、代わりに出頭した国選弁護人が、私選弁護人の作成した控訴趣意書の内容に従って弁論を遂行している。また、その主張内容は量刑不当に限定されており、証拠調べ等の複雑な手続を必要とするものでもなかった。そうであれば、私選弁護人自らが弁論を行わなかったとしても、被告人の防御に実質的な支障が生じたとはいえず、被告人に不利益を来したとは認められない。したがって、期日変更を認めなかった裁判所の判断は適法である。
結論
原審の訴訟手続に違法は存せず、憲法違反や刑事訴訟法411条適用の余地はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
弁護人の期日変更申請に対する裁判所の裁量を肯定しつつ、実質的利益の有無を基準とする。答案上は、被告人の防御権の形式的な侵害(弁護人の不在)だけでなく、主張内容や代替措置(国選弁護人の活動)により不利益が回避されているかを検討する際の論拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)3013 / 裁判年月日: 昭和27年10月7日 / 結論: 棄却
控訴審において第一回公判期日の通知が被告人の私選弁護人に対して為されていなくても、被告人が控訴審で初め弁護人を私選しない旨回答しながら、被告人のために弁護人が国選せられ、被告人および国選弁護人の双方から控訴趣意書の提出があり、国選弁護人に右公判期日の通知がなされた後(但し、被告人に対しては未だ同公判期日の召喚場が送達さ…