控訴審において第一回公判期日の通知が被告人の私選弁護人に対して為されていなくても、被告人が控訴審で初め弁護人を私選しない旨回答しながら、被告人のために弁護人が国選せられ、被告人および国選弁護人の双方から控訴趣意書の提出があり、国選弁護人に右公判期日の通知がなされた後(但し、被告人に対しては未だ同公判期日の召喚場が送達されない以前)になつて、あらたに弁護人を私選したものであり、同公判期日にはさきに私選弁護人の選任によつて一たん解任された国選弁護人が再任せられたが、同期日に出頭した被告人はこれに対し何ら異議の申立もせず、また同弁護人は同公判で被告人および国選弁護人の控訴趣意書は勿論、弁護人の選任届と同時に提出せられた前記私選弁護人の控訴趣意書に基ずいて弁論しており、原判決もまたこの三者について適確な判断を与えており、さらに判決言渡期日たる第二回公判期日は右私選弁護人にも適法に通知せられているのに、同弁護人よりは弁論再開の申請等の申立もなく、原判決が、同弁護人出頭の上同公判で言い渡されている場合には、前記のような刑訴第二七三第三項違背は未だもつて原判決破棄の理由とするにたらないものというべきである。
控訴審における刑訴第二七三条第三項違背が刑訴第四一一条に該当しないものと認められる一事例
刑訴法404条,刑訴法273条,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法392条1項,刑訴法411条1号
判旨
私選弁護人に対する公判期日通知を欠いたまま公判手続が進められた場合であっても、弁護人が作成した控訴趣意書に基づき実質的な弁論が行われ、判決言渡期日が適法に通知されているなどの事情があれば、判決に影響を及ぼす法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
私選弁護人に対する公判期日の通知を欠いたまま審理を進めた手続上の違法(刑事訴訟法273条2項違反)が、判決を破棄すべき事由に該当するか。
規範
公判期日の通知(刑事訴訟法273条2項)を欠いた手続上の違法があったとしても、被告人の防御権が実質的に保障されており、審理経過や判決の内容に照らして不当な結果が生じていない場合には、直ちに原判決を破棄すべき理由とはならない。
重要事実
控訴審において、被告人は当初私選弁護人を置かず国選弁護人が選任されていた。国選弁護人へ公判期日が通知された後、被告人は新たに私選弁護人を選任したが、裁判所は当該私選弁護人へ第1回公判期日の通知を怠った。第1回公判には再任された国選弁護人が出頭し、被告人も異議を述べなかった。弁論では私選弁護人が提出した控訴趣意書の内容も引用され、原判決はそれらに対し判断を示した。その後、第2回公判(判決言渡期日)は私選弁護人にも通知され、同弁護人は出頭したが弁論再開の申立て等は行わなかった。
あてはめ
第1回公判期日の通知漏れは法273条に抵触するが、以下の点から実質的な防御権侵害はないと評価される。第一に、公判では私選弁護人があらかじめ提出した控訴趣意書に基づいて実質的な弁論が行われており、裁判所もその主張を検討している。第二に、出頭した被告人が国選弁護人の関与に異議を述べていない。第三に、判決言渡期日は私選弁護人に通知されており、弁論再開の機会があったにもかかわらず申立てがなされていない。以上より、手続違背は判決に影響を及ぼす程度に至らない。
結論
本件の手続違背は、原判決を破棄すべき理由(刑事訴訟法405条等)には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法379条(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)の存否を判断する際の「実質的妥当性」の考慮手法として活用できる。特に弁護人の受送達権限や出頭権の侵害が問題となる場面で、主張機会の代替的確保や事後の是正機会の有無から違法の程度を相対化するロジックとして有用である。
事件番号: 昭和25(あ)1047 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: その他
国選弁護人選任の請求に対し、控訴審において控訴趣意書最終提出日五日前にこれを選任しても、同弁護人が控訴趣意書を提出し異議なく弁論した場合は、弁護権を制限したことにならない。