国選弁護人選任の請求に対し、控訴審において控訴趣意書最終提出日五日前にこれを選任しても、同弁護人が控訴趣意書を提出し異議なく弁論した場合は、弁護権を制限したことにならない。
国選弁護人選任の請求に対し控訴審において控訴趣意書提出最終日五日前にこれを選任した場合と弁護権制限の有無
刑訴法36条,憲法37条3項
判旨
控訴趣意書の提出期限直前に国選弁護人が選任された場合であっても、当該弁護人が実際に控訴趣意書を提出し、かつ公判廷で異議なく弁論を行っている限り、憲法37条3項の弁護人依頼権に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書の提出期限のわずか5日前に国選弁護人が選任された場合において、被告人が憲法37条3項に基づく弁護人の援助を受ける権利を侵害されたといえるか。
規範
被告人に弁護人依頼権を保障する憲法37条3項の趣旨は、弁護人による実効的な援助を確保することにある。したがって、国選弁護人の選任時期が控訴趣意書の提出期限間際であったとしても、弁護人が必要な書面を提出し、実質的な弁護活動を遂行して手続が進行した場合には、直ちに同条に違反するものではない。
重要事実
被告人は国選弁護人の選任を請求していたが、原審(控訴審)において実際に国選弁護人が選任されたのは、控訴趣意書提出最終日の5日前であった。選任された弁護人は、期限内に控訴趣意書を提出し、公判においては被告人が自ら提出した控訴趣意書と併せて、これらに基づき異議なく弁論を行った。被告人側は、このような遅い時期の選任は憲法37条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、国選弁護人が選任されたのは期限の5日前という近接した時期であったが、当該弁護人は遅滞なく控訴趣意書を提出するという職務を果たしている。また、実際の公判審理においても、弁護人は自ら作成した趣意書および被告人作成の趣意書に基づき、何ら異議を述べることなく弁論を遂行している。これらの事実からすれば、弁護人による援助は実効的に行われており、防御権の侵害があったとは認められない。したがって、憲法違反があるとの主張は、その前提を欠くというべきである。
結論
原審の弁護人選任手続に憲法37条3項違反の違憲はなく、適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法における弁護権保障の限界を示す。選任の遅れが直ちに違憲となるのではなく、提出された書面の有無や弁論の実施状況といった「実質的な弁護活動が確保されたか」という観点から判断すべきことを示唆している。答案上は、手続的瑕疵が防御権を実質的に侵害したか否かの基準として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1115 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において国選弁護人が選任されないまま控訴趣意書の提出期限が経過したとしても、それが被告人の弁護人選任請求の遅滞に起因するものであるならば、被告人の弁護権を侵害した違憲・違法の事由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原審(控訴審)から控訴趣意書提出最終日(昭和29年12月10日)の通…
事件番号: 昭和31(あ)3848 / 裁判年月日: 昭和32年6月19日 / 結論: 棄却
控訴審が被告人から貧困を理由に国選弁護人選任の請求があつたのにその選任を遅延し、控訴趣意書差出最終日を経過した後に至り国選弁護人を選任した場合において、改めて同弁護人に対し控訴趣意書を提出する機会を与える措置をとらなかつたとしても、同弁護人において自ら控訴趣意書を提出するため右最終日の変更方その他格別の請求をすることな…