必要弁護事件につき私選弁護人が控訴趣意書を提出しないで控訴趣意書最終提出日後に辞任した場合、被告人が控訴趣意書を提出しておれば公判期日に国選弁護人を選任することで足りる。
弁護権の不法制限とならない一事例。
憲法37条3項
判旨
控訴趣意書の提出期限経過後に弁護人が辞任し、後任弁護人が選任されたとしても、期限後の提出が許されない以上、弁護権を不当に制限したことにはならない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書の提出期限経過後に弁護人が交代した場合に、後任弁護人に控訴趣意書の提出を認めないことが、憲法の保障する弁護権の不当な制限に当たるか。
規範
控訴趣意書の提出期限を定め、被告人及び弁護人に通知した場合には、特段の事情がない限り、その期限経過後の提出は許されない。また、提出期限後に選任された後任弁護士に対して、改めて提出の機会を与える必要はなく、国選弁護人が既提出の控訴趣意書に基づき弁論を行えば、弁護権の保障として十分である。
重要事実
原審において控訴趣意書の提出最終日が昭和27年1月10日と定められ、被告人選任の弁護人と被告人に通知された。被告人本人は期限内に控訴趣意書を提出したが、弁護人は提出しなかった。その後、2月5日に弁護人が辞任届を提出。公判期日に選任された国選弁護人は、被告人本人が提出した控訴趣意書に基づいて弁論を行った。被告人側は、これが弁護権を不当に制限するものであり違憲であると主張して上告した。
事件番号: 昭和25(あ)1047 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: その他
国選弁護人選任の請求に対し、控訴審において控訴趣意書最終提出日五日前にこれを選任しても、同弁護人が控訴趣意書を提出し異議なく弁論した場合は、弁護権を制限したことにならない。
あてはめ
本件では、当初の弁護人に提出期限が通知されており、提出の機会は十分に与えられていた。期限経過後に弁護人が辞任し、仮にその時点で後任が選任されたとしても、既に提出期限を過ぎている以上、後任弁護人に新たな提出を認める法的根拠はない。また、国選弁護人が被告人作成の趣意書に基づき適切に弁論を行っていることから、防御権の行使に実質的な支障は生じていないと判断される。
結論
弁護権を不当に制限した事実は認められず、憲法違反には当たらない。
実務上の射程
刑事訴訟法における控訴趣意書の提出期限の厳格性を確認する事案である。被告人本人が提出している場合、弁護人が期限を徒過しても直ちに不利益とは扱われないが、実務上は期限遵守が絶対的な原則であることを示している。
事件番号: 昭和25(あ)643 / 裁判年月日: 昭和25年11月2日 / 結論: 棄却
原審は控訴趣意書を差出すべき最終日を昭和二四年八月一九日と指定し、同年七月二二日その通知書を被告人に送達してこれが通知をなしているのである。そして、被告人は国選弁護人選任要否の照会に対し一旦その必要なき旨の回答をしながら控訴趣意書差出最終日に切迫した同年八月一七日に改めてこれが選任を請求したものであつて、原審裁判長は同…