判旨
被告人が自らの責に帰すべき事由により控訴趣意書の提出期限直前に国選弁護人の選任請求をした場合、裁判所が提出期限経過後に弁護人を選任したとしても、提出期限の再指定を行う義務はない。
問題の所在(論点)
被告人が控訴趣意書の提出期限直前に弁護人の選任請求をした場合、裁判所は提出期限を再指定(指定替え)して、新たに選任された弁護人に趣意書提出の機会を保障すべきか。憲法が保障する弁護人の援助を受ける権利との関係が問題となる。
規範
被告人の責に帰すべき事由により、控訴趣意書提出期間内に趣意書を提出できる適当な時期に弁護人選任の請求がなされなかった場合、裁判所は控訴趣意書提出最終日の指定替えをして弁護人に改めて提出機会を与える義務を負わない。このような運用は被告人の憲法上の権利を妨げるものではない。
重要事実
控訴審において、裁判所は控訴趣意書の提出最終日を昭和28年10月17日と定め、同年9月21日に被告人へ通知するとともに、弁護人選任に関する通知・照会を行った。しかし、被告人が国選弁護人の選任請求を行ったのは、提出最終日当日である同年10月17日であった。
あてはめ
本件では、被告人は提出期限の約1ヶ月前に通知を受けていたにもかかわらず、期限当日まで選任請求を行っていない。他に特別の事情も認められないため、これは被告人の責に帰すべき事由により適当な時期に請求しなかったものといえる。したがって、期限後に弁護人が選任されたとしても、裁判所が提出期限を遅らせるなどの措置を講じなかったことは正当である。
結論
裁判所に提出期限の指定替えを行う義務はなく、憲法違反には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法における控訴趣意書の提出期限管理の実務指針となる。被告人の権利保護と訴訟の迅速・遅延防止の調和の観点から、被告人側の不誠実な対応(期限直前の請求)については、裁判所に追加の機会付与を強制しないという「自責事由」のロジックは現代の答案作成でも有用である。
事件番号: 昭和25(あ)643 / 裁判年月日: 昭和25年11月2日 / 結論: 棄却
原審は控訴趣意書を差出すべき最終日を昭和二四年八月一九日と指定し、同年七月二二日その通知書を被告人に送達してこれが通知をなしているのである。そして、被告人は国選弁護人選任要否の照会に対し一旦その必要なき旨の回答をしながら控訴趣意書差出最終日に切迫した同年八月一七日に改めてこれが選任を請求したものであつて、原審裁判長は同…
事件番号: 昭和31(あ)3848 / 裁判年月日: 昭和32年6月19日 / 結論: 棄却
控訴審が被告人から貧困を理由に国選弁護人選任の請求があつたのにその選任を遅延し、控訴趣意書差出最終日を経過した後に至り国選弁護人を選任した場合において、改めて同弁護人に対し控訴趣意書を提出する機会を与える措置をとらなかつたとしても、同弁護人において自ら控訴趣意書を提出するため右最終日の変更方その他格別の請求をすることな…