判旨
控訴趣意書の提出期限に極めて近接して国選弁護人の選任請求がなされた場合、裁判所が期限後に弁護人を選任しても憲法37条3項に反しない。本判決は、選任時期が不適切であっても、被告人の権利行使が実質的に妨げられなければ違憲とはならない旨を判示した。
問題の所在(論点)
被告人が控訴趣意書提出期限の直前に国選弁護人の選任を請求し、裁判所が期限後にこれを選任した場合、憲法37条3項が保障する弁護人の援助を受ける権利を侵害し違憲となるか。
規範
被告人に貧困その他の事由により弁護人を依頼することができないときは、国でこれに弁護人を付ける(憲法37条3項)。もっとも、弁護人選任請求が控訴趣意書の提出期限に近接してなされた場合、裁判所が期限後に弁護人を選任したとしても、直ちに被告人の弁護を受ける権利を侵害したものとはいえず、手続の全過程を照らして権利行使の妨げの有無を判断すべきである。
重要事実
被告人は昭和28年6月11日に弁護人選任に関する問合せ等の送達を受けたが、控訴趣意書の差出最終日(同年7月10日)のわずか3日前である7月7日に国選弁護人の選任を請求し、併せて自ら作成した控訴趣意書を提出した。原審は期限後の同年10月6日に弁護人を選任し、同日の公判期日において当該弁護人は被告人提出の控訴趣意書に基づき弁論を行い、異議なく終了した。
あてはめ
原審が国選弁護人を選任した時期自体は「当を得たものではない」と評価される。しかし、被告人が選任請求を行ったのは提出期限に極めて近接した時期であった。また、被告人自身が作成した控訴趣意書が提出されており、選任された弁護人は公判期日においてその内容に基づき異議なく弁論を行っている。このような経緯に鑑みれば、期限後の選任であっても被告人の権利行使を妨げたとはいえない。
結論
被告人の権利行使を妨げたものとはいえず、憲法37条3項に違反しない。上告棄却。
事件番号: 昭和31(あ)3848 / 裁判年月日: 昭和32年6月19日 / 結論: 棄却
控訴審が被告人から貧困を理由に国選弁護人選任の請求があつたのにその選任を遅延し、控訴趣意書差出最終日を経過した後に至り国選弁護人を選任した場合において、改めて同弁護人に対し控訴趣意書を提出する機会を与える措置をとらなかつたとしても、同弁護人において自ら控訴趣意書を提出するため右最終日の変更方その他格別の請求をすることな…
実務上の射程
国選弁護人の選任遅滞が即座に違憲・違法となるわけではなく、選任請求の時期やその後の弁護活動の実態から「権利行使を妨げたか」を判断する。実務上は、期限徒過後の選任であっても、弁護人が実質的な弁護活動(追完や公判での弁論等)を行い得たのであれば、手続的瑕疵は治癒されるという文脈で引用される。
事件番号: 昭和35(あ)1984 / 裁判年月日: 昭和35年12月12日 / 結論: 棄却
被告人は原審で刑訴規則一七八条による通知書に対し、弁護人を私選する旨回答し置きながら選任を懈怠し、控訴趣意書の提出最終日を経過して国選弁護人の選任を求めたものであること記録上明白であるから、違憲の問題を生じない(昭和二八年(あ)第一七〇七号、同三〇年七月二九日第二小法廷判決、昭和二五年(あ)第二一後三号、同二八年四月一…