国選弁護人は、裁判所がその所在地に在る弁護士の中から、特に明らかに不適当な事情のない限り、何人かを選任すれば足りるのであつて各選任毎にその弁護人の実質的な能力責任感の強弱等を調査する責務を負担するものとは解されない。
弁護士は資格のある弁護人か
憲法37条3項,刑訴法272条,刑訴法36条,刑訴規則177条
判旨
国選弁護人の選任において、裁判所は所在地にある弁護士の中から不適当な事情がない限り選任すれば足り、個別に能力や責任感を調査する義務はない。また、不適切な選任があったと認められない限り、弁護権行使の不十分さを理由に憲法37条3項違反を認めることはできない。
問題の所在(論点)
裁判所が国選弁護人を選任する際、個々の弁護士の実質的な能力や責任感を調査する義務を負うか。また、弁護権の行使が不十分であったことを理由に、選任方法の違憲・違法を問えるか。
規範
裁判所が国選弁護人を選任する際、所在地にある弁護士の中から、明らかに不適当な事情がない限り選任すれば足りる。各選任ごとに弁護人の実質的な能力や責任感の強弱等を調査する責務までは負担しない。弁護権の行使が不十分であったとしても、裁判所が不適当な事情を知りながら敢えて選任した等の特段の事情がない限り、選任手続に違法はなく憲法37条3項にも違反しない。
重要事実
被告人が第一審の国選弁護人の能力を不服とし、弁護権の行使が不十分であったために原審よりも重い刑を科されたと主張した事案。被告人側は、裁判所がこのような弁護人を選任したことは、憲法37条3項(弁護人依頼権)および刑訴法36条の趣旨に違反し、量刑不当の原因になったとして上告した。
あてはめ
本件において、第一審裁判所が所在地の弁護士の中から選任を行うにあたり、明らかに不適当な事情があったとは認められない。また、裁判所が所論のような弁護人の能力不足を知りながらあえて選任したと認めるに足りる資料も存在しない。弁護権の行使が不十分であったために量刑が不当になったという主張は、実質的には量刑不当の主張にすぎず、選任手続自体の違憲を基礎付けるものではないといえる。
結論
本件国選弁護人の選任方法に違法はなく、憲法37条3項違反の主張は前提を欠き、上告理由に当たらない。
実務上の射程
国選弁護人の選任における裁判所の裁量と義務の範囲を限定的に捉えた判例である。答案上は、効果的な弁護が受けられなかったことを理由とする弁護権侵害の主張(いわゆる不誠実な弁護)に対し、選任段階での過失を否定する根拠として活用できる。ただし、現代の議論では選任後の弁護活動の質そのものが憲法上の問題となり得る点に注意を要する。
事件番号: 昭和27(あ)5465 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項前段に基づく国選弁護人の選任は、被告人からの選任の請求がある場合にのみ義務付けられるものであり、請求がない場合にまで選任を要するものではない。 第1 事案の概要:刑事被告人(上告人)が、公判手続において弁護人が選任されていない状態であったことにつき、憲法37条3項の保障する「弁護人を…