原審裁判所が被告人に対し弁護人選任請求の権利があることを通知しなかつたからといつて、それが憲法三七条三項後段に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二四年(れ)二三八号、同年一一月三〇日大法廷判決・昭和二四年(れ)六八七号同年一一月二日大法廷判決)の趣旨に徴し明らかであるから、必要弁護事件につき公判期日に国選弁護人を選任し、被告人提出の控訴趣意書に基いて、弁論させたとしても、これを違憲ということはできない。
控訴審における弁護人選任の時期と憲法第三七条第三項。
憲法37条3項,刑訴法404条,刑訴法289条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
判旨
裁判所が被告人に対して弁護人選任請求権があることを通知しなかったとしても、直ちに憲法37条3項後段に違反するものではない。
問題の所在(論点)
裁判所が被告人に対し、国選弁護人の選任を請求できる権利があることを通知しなかった場合、憲法37条3項後段(被告人が自ら弁護人を依頼できないときの国による弁護人付与義務)に違反するか。
規範
憲法37条3項後段が規定する被告人の弁護人依頼権は、被告人が国に対して弁護人の付与を請求する権利を保障するものであるが、裁判所に対して当該権利の存在を被告人へ通知することまでを憲法上の義務として課すものではない。
重要事実
被告人の刑事裁判において、原審裁判所は被告人に対し、自ら弁護人を選任することができないときに国に対して弁護人の選任を請求できる権利(弁護人選任請求権)があることを通知しなかった。これに対し被告人側は、当該通知を欠いたまま手続を進めたことは憲法37条3項後段に違反すると主張して上告した。
あてはめ
憲法37条3項後段は、貧困その他の理由により自ら弁護人を依頼できない被告人に対し、国の費用で弁護人を付すことを要求する権利を保障している。しかし、裁判所がこの権利の行使を助けるために通知を行うことは、刑事訴訟法等の訴訟法上の問題となり得るものの、憲法が直接命じている手続的保障には含まれない。したがって、本件において裁判所が権利の通知を怠った事実は、憲法規範そのものへの抵触を構成しないと解される。
結論
裁判所による弁護人選任請求権の不通知は、憲法37条3項後段に違反しない。
実務上の射程
本判決は、憲法上の弁護人依頼権の保障範囲を画定するものであり、権利の行使を教示する義務の有無を論じる際の基準となる。ただし、現代の刑事訴訟法においては、権利教示が制度化されている(刑訴法272条等)ため、実務上は憲法違反の問題というよりは、訴訟法上の手続違背の問題として処理されるべき射程を持つ。
事件番号: 昭和25(あ)1712 / 裁判年月日: 昭和26年7月3日 / 結論: 棄却
原審裁判所が控訴申立事件を受理するや直ちに被告人に弁護人の選任を請求することができる旨告知せず、又被告人も亦これが請求をしないで控訴趣意提出期間を経過しその後になつて始めて被告人は右請求をなし原裁判所が弁護人を選任したため、同弁護人は控訴趣意書を提出することができなくなつたからといつて、原裁判所は、被告人に対しその弁護…