本件につき原審訴訟記録をみれば、裁判所から被告人に弁護人を選任するかどうかの問合せをした旨の記載なく、控訴趣意書提出の最終日たる昭和二六年一二月七日を経過して公判期日の二日前たる昭和二七年二月九日に至り始めて弁護人が国選されていること所論のとおりであるが、弁護人は公判期日に出頭して被告人提出の控訴趣意書に基いて弁論し、異議なく弁論を終了したことが認められる。このような場合には憲法三七条三項の違背があるといえない。
控訴趣意書提出期間経過後に弁護人が国選された場合と憲法第三七条第三項
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法289条,刑訴法391条
判旨
憲法37条3項の弁護人依頼権は被告人自らが行使すべきものであり、裁判所が国選弁護人の選任請求権を告知する義務まではない。必要的弁護事件において公判直前に弁護人が選任された場合でも、公判で実質的な弁護活動が行われ、異議なく終了していれば弁護権の不法な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判所が国選弁護人の選任請求権を告知しなかったこと、および公判直前に弁護人を選任したことが、憲法37条3項の保障する弁護人依頼権を侵害し、違憲といえるか。
規範
憲法37条3項前段の弁護人依頼権は被告人が自ら行使すべき権利であり、裁判所は被告人に当該権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足りる。裁判所が被告人に対し、国選弁護人の選任を請求し得る旨を告知すべき義務までは負わない。また、必要的弁護事件において選任の時期が遅れたとしても、直ちに弁護権の行使を不法に制限したものとはいえない。
重要事実
必要的弁護事件の控訴審において、裁判所は被告人に対し弁護人選任の有無を問い合わせるなどの告知を行わなかった。その後、控訴趣意書の提出期限を経過し、公判期日のわずか2日前になって初めて国選弁護人が選任された。選任された弁護人は、公判期日に出頭し、被告人が作成・提出していた控訴趣意書に基づいて弁論を行い、異議なく弁論を終了した。
あてはめ
まず、憲法37条3項は被告人の自発的行使を前提とするため、告知を欠いたとしても権利行使を妨げたとはいえない。次に、選任時期について、公判2日前という選任は当を得たものとはいえないが、弁護人は公判期日に出頭しており、被告人自らが作成した控訴趣意書に基づき、実質的な弁論を異議なく遂行している。したがって、具体的な防御権の行使が不当に妨げられた事実は認められず、弁護権の不法な制限には当たらないと解される。
結論
裁判所の措置は憲法37条3項に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
弁護人依頼権の本質を「機会の付与」と解し、告知義務を否定する実務上の基本姿勢を示す。答案上は、手続的瑕疵(選任の遅れ等)が直ちに違憲・違法となるのではなく、実質的な防御権の行使に支障が生じたか否かという視点から、弁論の経過等の具体的事実を拾ってあてはめる際の準拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)2914 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項前段の弁護人依頼権は、被告人が自ら行使すべきものであり、裁判所に選任請求が可能であることの告知義務を課すものではない。また、必要的弁護事件の範囲は立法政策により決定されるものであり、直ちに憲法31条や37条から定まるものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、原審(控訴審)において…