判旨
弁護人選任書の送達日付に誤記がある場合であっても、記録上弁護人が公判期日に出頭していることが明らかなときは、実質的な弁護権の行使を否定すべきではなく、手続上の違憲は認められない。
問題の所在(論点)
弁護人選任書の送達日付が実際の公判期日より後になっている場合、被告人の弁護を受ける権利(憲法37条3項)を侵害する違憲な手続といえるか。
規範
訴訟手続の形式的な不備(書面の日付の誤り等)があったとしても、記録上の客観的事実に基づき、被告人の弁護を受ける権利が実質的に保障されていると認められる場合には、その不備を理由として憲法違反を肯定することはできない。
重要事実
被告人が第一審判決に対し、弁護人選任書の送達日付が昭和24年9月22日となっている点について、同年8月31日の第一回公判期日より後であることを理由に違憲を主張した事案。しかし、記録によれば当該弁護人は8月31日の公判期日に実際に出頭していた。
あてはめ
弁護人選任書の送達日付は9月22日とされているが、記録によれば弁護人は8月31日の第一回公判期日に実際に出頭している。この事実から、送達日付の記載は「8月22日」の単純な誤記であると認められる。したがって、被告人の弁護を受ける権利が手続上阻害された事実はなく、違憲の前提を欠くといえる。
結論
弁護権侵害の前提となる事実が認められないため、違憲の主張は採用できず、上告は棄却される。
実務上の射程
手続書類の形式的な誤記と実質的な手続保障の関係を示す。実務上、書類の不備を理由に無効や違憲を主張する際は、それが実質的な防御権の侵害に直結しているかを慎重に検討する必要がある。本判決は、客観的な公判記録による補認を許容する立場を示したものといえる。
事件番号: 昭和25(あ)2308 / 裁判年月日: 昭和26年3月1日 / 結論: 棄却
刑訴規則第二三六条第四項の規定により五月一三日を控訴趣意書提出の最終日とみなすべきところ、被告人は同年四月二七日附を以て原裁判所に対し自ら控訴趣意書を提出すると共に国選弁護人選任請求を為し右請求書は翌月四日原審に到達した。原審は同月一二日弁護士川上広蔵を被告人の国選弁護人に選定し、控訴趣意書差出最終日であるその翌日選任…