記録によれば、原審裁判所が弁護人木原主計の第一回公判期日変更申請を許容しなかつたこと及び、同弁護人がその期日に公判に立会わないことは所論のとおりであるが、国選弁護人により被告人自身選定した右木原弁護人提出の控訴趣意書に基く弁論がなされたこと、その控訴趣意は簡単明白であり特に新たな事実証拠の取調を要する趣旨でもないこと及び原審は控訴趣意の量刑不当の主張を容れて第一審判決を破棄し処刑を減軽していることが認められるのであるから、原審で公判期日変更請求を許容しなかつた結果が被告人に不利益を来したとは到底考えられない。
弁護人の公判期日変更申請を許容せず国選弁護人の弁論をきいてした裁判と弁護権の制限の有無
憲法37条3項,刑訴法276条
判旨
裁判所が弁護人の公判期日変更申請を許容せず、弁護人が公判に立ち会わなかったとしても、提出済みの控訴趣意書に基づき適切に弁論が行われ、結果として被告人に不利益が生じていない場合には、当該手続は違法ではない。
問題の所在(論点)
弁護人が公判期日変更申請を却下され欠席した状況下で、提出済みの控訴趣意書に基づき弁論が行われた手続が、憲法上の防御権(弁護を受ける権利)を侵害し、刑事訴訟法上の違法な手続に該当するか。
規範
公判期日変更の可否については裁判所の裁量に属するが、その決定が被告人の防御権を不当に侵害し、結果として被告人の利益を害する場合には訴訟手続の違法となり得る。手続の適法性は、弁護人の提出した書面の内容、実際の弁論の状況、および判決の結果として不利益が生じたか否かを総合して判断する。
重要事実
控訴審において、被告人が選任した私選弁護人が第一回公判期日の変更を申請したが、裁判所はこれを許容しなかった。そのため、当該弁護人は公判期日に立ち会わなかったが、国選弁護人によって、私選弁護人が提出していた控訴趣意書に基づく弁論が実施された。控訴趣意の内容は「量刑不当」という簡潔なものであり、新たな事実調べを要するものではなかった。原審(控訴審)は、この主張を容れて第一審判決を破棄し、処刑を減軽する判決を言い渡した。
あてはめ
本件では、私選弁護人が欠席したものの、国選弁護人が選任されており、私選弁護人が作成した控訴趣意書に基づいて実質的な弁論が行われている。また、控訴趣意の内容は「量刑不当」に限定された簡潔なもので、証拠調べ等の複雑な手続を要しない。さらに、原審は実際にこの主張を採用して第一審判決を破棄し、被告人の刑を減軽している。これらの事情を考慮すれば、期日変更を認めなかったことが被告人の防御に不利益を及ぼしたとは認められず、被告人の利益を不当に害した点もないといえる。
結論
本件の訴訟手続には何ら違法はなく、被告人の利益を不当に害するものでもないため、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における弁護人の出廷確保と期日指定の裁量に関する事例である。弁護人が欠席したとしても、書面による主張が反映され、かつ結果として被告人に有利な判決(減軽等)が出ている場合には、手続上の違法性が否定されやすいことを示している。実務上は、形式的な欠席の有無よりも、実質的な防御権の行使が担保されていたかという視点で活用すべき判例である。
事件番号: 昭和26(れ)1598 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人への適法な召喚手続がなされ、かつ強制弁護事件でない場合には、弁護人が公判期日に欠席した状態で証拠調べ等の訴訟手続を進めても、刑事訴訟法上の手続違背には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が刑事訴追された事件において、原審(二審)は弁護人が欠席した状態で証拠調べ等を実施した。これ…