判旨
控訴審において主張されず原判決が判断を示していない事項に関する違憲主張は、適法な上告理由にならない。また、刑事訴訟規則44条により公判調書の必要的記載事項は限定されており、同条に定めのない事項の不記載は手続上の違法を構成しない。
問題の所在(論点)
1. 控訴審で未主張かつ原判決が判断していない事項について、上告審で新たに違憲を主張することが適法な上告理由となるか。 2. 刑事訴訟規則44条に規定のない事項を公判調書に記載しなかったことが、訴訟手続の違法を構成するか。
規範
1. 控訴審で主張されず、かつ原判決が判断を示していない事項についての違憲主張は、適法な上告理由(刑訴法405条)とはならない。 2. 公判調書の記載事項については、刑事訴訟規則44条により必要的記載事項が限定されており、同条に列挙されていない事項を記載しなかったとしても、訴訟手続の違法は認められない。
重要事実
被告人の弁護人は、第一審の訴訟手続において憲法違反があった旨を主張して上告した。しかし、当該事項は控訴審(原審)において控訴趣意として主張されておらず、原判決もそれについて何ら判断を示していなかった。また、弁護人は公判調書の記載内容に関連して手続の違法を主張していたが、その対象は刑事訴訟規則44条が定める必要的記載事項に含まれないものであった。
あてはめ
1. 本件で主張された第一審の手続違憲の事由は、控訴審において全く争われておらず、原判決の審判対象にもなっていない。上告審は事後審である原判決の当否を審査するものであるから、原判決が判断していない事項の主張は不適法である。 2. 公判調書の記載については、刑事訴訟規則44条が記載すべき事項を限定的に列挙している。本件で所論が指摘する事項は同条の必要的記載事項に該当しないため、記載がないことをもって手続の違憲や違法をいうことは前提を欠く。
結論
本件上告は、適法な上告理由にあたらないため棄却される。
実務上の射程
上告審の事後審的性格から、原審での主張・判断を経ない事項の上告理由としての適格性を否定した事例である。特に公判調書の記載事項をめぐる争いにおいて、規則44条の限定列挙性を強調する際の根拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)1367 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意として主張されず、原審の判断を経ていない事項については、特段の事情がない限り適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが上告を申し立てた事案。Bの弁護人は、控訴審では主張していなかった事項を上告趣意(第一点)として主張したほか、憲法違反を名目として事実誤認や証拠の証明…