判旨
控訴趣意として主張されず、原審の判断を経ていない事項については、特段の事情がない限り適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
控訴審で主張されなかった事項を上告理由とすることができるか。また、実質的に事実誤認や証拠の証明力を争う主張は、適法な上告理由となるか。
規範
上告審は、原判決の当否を事後的に審査するものであるため、控訴趣意として主張されず、原審の判断に含まれない事項を上告理由とすることは原則として許されない。ただし、刑事訴訟法411条各号に該当するような著しい正義に反する事由がある場合には、例外的に職権により原判決を破棄することができる。
重要事実
被告人AおよびBが上告を申し立てた事案。Bの弁護人は、控訴審では主張していなかった事項を上告趣意(第一点)として主張したほか、憲法違反を名目として事実誤認や証拠の証明力を争う主張(第二点、第三点)を展開した。また、Aの弁護人も憲法違反を主張したが、実質的には事実誤認の主張であった。
あてはめ
Bの主張第一点は、控訴趣意として主張されておらず、原審の判断もなされていない事項である。また、AおよびBのその他の主張も、憲法違反という形式をとっているものの、実質は事実誤認や証拠の証明力の評価を争うものであり、法律上の上告理由には当たらない。さらに、記録を精査しても刑事訴訟法411条を適用して職権で破棄すべき重大な事由は認められない。
結論
本件各上告は、適法な上告理由を欠くものとして棄却される。
実務上の射程
上告審における「上告理由」の制限的解釈を示す典型例。実務上、上告趣意書では原判決の憲法違反や判例違反、あるいは訴訟手続の法令違反等を的確に指摘する必要があり、単なる事実誤認の主張や原審での未主張事項は門前払いされるリスクが高いことを示唆している。
事件番号: 昭和27(あ)1026 / 裁判年月日: 昭和28年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張せず、原審も判断していない憲法違反の主張は、原則として適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が一審の証拠取捨選択について憲法違反を主張して上告したが、当該主張は控訴審(原審)において控訴趣意として主張されておらず、原審もこれについて何ら判断を示していなかった事案である。…