判旨
上告審において憲法違反を主張するには、原則として原審においてその旨を主張し、判断を経ていることを要する。第一審での証人申請等、主張の前提となる手続を欠く場合には、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
原審において主張せず、かつその判断も経ていない憲法違反の主張が、刑訴法上の適法な上告理由となるか。
規範
上告審は事後審であるため、憲法違反を上告理由とする場合には、特段の事情がない限り、原審(控訴審)において当該憲法違反に関する主張がなされ、これに対する判断が示されていることを要する。また、主張の前提となる事実関係や証拠の申し出が下級審において全くなされていない場合には、上告審での主張は採用できない。
重要事実
被告人が上告を提起したが、弁護人が主張した憲法違反の事由については、原審(控訴審)において全く主張されておらず、原審の判断も経ていなかった。また、第一審においても、主張の前提となる特定の人物(A)に対する証人申請等の手続が行われた形跡も認められなかった。
あてはめ
本件では、憲法違反の主張が原審においてなされていない。加えて、第一審段階ですら主張を基礎付けるための証人申請などの防御活動が行われていない。このように、下級審において争点化される機会が一度も与えられていない事項を、上告審で初めて持ち出すことは、事後審としての構造に反し、その前提を欠くものと言わざるを得ない。
結論
本件憲法違反の主張は適法な上告理由に当たらないため、上告は棄却される。
実務上の射程
憲法違反を上告理由とする際の「上告理由の適格性」に関する判例である。答案上は、控訴審で主張していない新論点を上告審で主張することの可否が問われた際、事後審構造の観点から制限される根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1367 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意として主張されず、原審の判断を経ていない事項については、特段の事情がない限り適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが上告を申し立てた事案。Bの弁護人は、控訴審では主張していなかった事項を上告趣意(第一点)として主張したほか、憲法違反を名目として事実誤認や証拠の証明…