判旨
弁護人不在のまま公判が開廷されたとの主張について、記録上その事実が認められない場合には、弁護権の侵害等を理由とする違憲の主張は前提を欠き、上告理由にならない。
問題の所在(論点)
弁護人不在で公判が開廷されたという事実が記録上認められない場合に、弁護権侵害等の憲法違反を理由とする上告が可能か。
規範
憲法が保障する弁護人依頼権等の侵害を理由とする上告が認められるためには、その前提となる訴訟手続上の瑕疵(弁護人不在での開廷等)が、記録上客観的に認められることを要する。
重要事実
被告人が公判において弁護人なしで審理が行われ、弁論の途中で弁護人が選任されたとして、憲法違反および訴訟手続の違法を理由に上告を申し立てた事案。しかし、訴訟記録を確認したところ、指摘されたような「弁護人なしでの開廷」という事実は存在しなかった。
あてはめ
弁護人は公判が弁護人なしで開始されたと主張するが、記録上そのような事実は認められない。したがって、憲法違反をいう主張はその前提を欠くものであり、実質的には単なる訴訟法違反の主張に帰するものである。また、職権で調査しても刑訴法411条を適用して判決を破棄すべき顕著な違法は認められない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、棄却される。
実務上の射程
憲法37条3項の弁護人依頼権の侵害を主張する場合であっても、まずはその前提となる事実関係(訴訟手続の経過)が記録上裏付けられている必要がある。事実誤認に基づく違憲主張は排斥されるという実務上の当然の理路を示している。
事件番号: 昭和27(あ)5065 / 裁判年月日: 昭和28年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において憲法違反を主張するには、原則として原審においてその旨を主張し、判断を経ていることを要する。第一審での証人申請等、主張の前提となる手続を欠く場合には、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、弁護人が主張した憲法違反の事由については、原審(控訴審)におい…