刑訴施行法第五条は、憲法第三七条第三項に違反しない。
刑訴施行法第五条の合憲性
憲法37条3項,刑訴施行法5条
判旨
憲法37条3項は全事件を必要的弁護事件とする趣旨ではなく、弁護人を要するか否かは法律に委ねられており、また同条2項は証人への審問機会を保障するが尋問の形式や時期を限定するものではない。
問題の所在(論点)
1.弁護人を付さずに開廷できる特例を定めた刑事訴訟法施行法5条が憲法37条3項に違反するか。2.裁判所が共同被告人に対する反対尋問を促さず、反対尋問未実施の供述を証拠としたことが憲法37条2項に違反するか。
規範
1.憲法37条3項の弁護人依頼権について:本規定は全被告事件を必要的弁護事件とするものではなく、いかなる事件をこれに当てるかは刑事訴訟法等の法律に委ねられる。2.憲法37条2項の証人審問権について:本規定は被告人に証人への審問機会を十分に与えることを保障するにとどまり、尋問の具体的な形式や時期までを規定したものではない。3.共同被告人の供述:共同審理の際に相互に反対尋問の機会が与えられている以上、その供述に証拠能力を認めることができる。
重要事実
被告人は簡易裁判所での審判に際し、刑事訴訟法施行法5条に基づきあらかじめ書面で「弁護人を必要としない」旨を申し出ていた。これにより、第1審は弁護人不在のまま開廷・判決された。また、証拠調べにおいて共同被告人の供述が罪証として用いられたが、裁判長から被告人に対して当該共同被告人への反対尋問を促す措置は特になされず、現実にも反対尋問は行われなかった。被告人側は、これらの手続が憲法37条2項・3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1.弁護人依頼権について:憲法は具体的基準を法律に委ねているところ、被告人が自ら不要と申し出た場合に限って簡易裁判所での弁護人不在を認める特例規定は、立法裁量の範囲内であり合憲である。2.証人審問権について:被告人は共同審理の過程で他の共同被告人を反対尋問し得る地位にあったといえる。裁判所が職権で反対尋問を促さなかったとしても、審問の「機会」が法的に保障されていた以上、憲法が保障する審問権の侵害には当たらない。
結論
本件第1審および原判決に憲法37条違反の違憲はなく、適法である。上告棄却。
実務上の射程
必要的弁護事件の範囲が立法政策に委ねられていることを示すとともに、証人審問権の保障内容が「機会の付与」にあることを明示した。特に共同被告人の供述については、反対尋問の「機会」さえあれば証拠能力が肯定されるという実務運用を支える判例である。
事件番号: 昭和24新(れ)536 / 裁判年月日: 昭和25年4月25日 / 結論: 棄却
一 憲法第三一條、第三七條第三項はすべての被告事件を必要辯護事件としなければならないという趣旨ではなく、如何なる事件を必要辯護事件となすべきものかは專ら刑訴法に依り決すべきことである。(昭和二四年(れ)第六〇四號同二五年二月一日大法廷判決)。 二 法令の誤解に基きこれを基礎として憲法違反を主張することは法律にいう違憲の…