判旨
憲法37条3項は全刑事事件において弁護人がなければ開廷できないと規定したものではなく、必要弁護事件の範囲は法律に委ねられており、一定の要件下で弁護人なしの開廷を認める規定も憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法施行法5条が、特定の要件下で弁護人なくして開廷できる旨を定めていることは、被告人の弁護人依頼権を保障する憲法37条3項、および法の下の平等を定める憲法14条に違反するか。
規範
憲法37条3項は、あらゆる刑事事件について例外なく弁護人がなければ公判を開廷できないことを規定したものではない。いかなる事件を必要弁護事件(弁護人がいなければ開廷できない事件)とするかは、専ら訴訟法によって決すべき事象である。また、新刑事訴訟法の適用時期や対象事件の範囲を定める経過法の立法は、諸般の事情を勘案して法律に一任されている。さらに、特定の類型の事件について一律に同様の取扱いを定める規定は、合理的な区別である限り憲法14条にも違反しない。
重要事実
被告人らが刑事事件において、簡易裁判所での審判を受けるに際し、刑事訴訟法施行法5条の規定に基づき、弁護人が選任されないまま公判手続が進められた。被告人らは第一審裁判所からの弁護人選任に関する照会に対し、自ら弁護人を必要としない旨を公判前に書面で申し出ていた。その後、弁護人がいない状態で開廷し判決が言い渡されたことについて、被告人側が憲法37条3項(弁護権の保障)および憲法14条(法の下の平等)に違反するとして上告した事案である。
あてはめ
まず、憲法37条3項は必要弁護事件の具体的範囲を法律の定めに委ねているところ、刑事訴訟法施行法5条が所定の要件下で弁護人なしの開廷を認めていることは、憲法の予定する立法裁量の範囲内である。次に、被告人らは自ら弁護人を必要としない旨を明示的に申し出ており、裁判所が弁護人の選任を妨げた事実も認められないため、実質的な弁護権の侵害はない。また、同条は簡易裁判所事件という同類型の事件に対して同様の取扱いをなすものであるから、合理的理由のない差別とはいえず、憲法14条に違反するともいえない。
結論
刑事訴訟法施行法5条の規定は憲法37条3項および14条に違反しない。したがって、弁護人がいない状態でなされた本件公判手続は適法である。
実務上の射程
憲法37条3項の「資格を有する弁護人を依頼することができる」という規定の性質が、必要的弁護を全ての事件に要求するものではないことを示す。答案上、必要弁護事件の範囲が立法政策に委ねられていることの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和24(れ)687 / 裁判年月日: 昭和24年11月2日 / 結論: 棄却
一 刑訴應急措置法第四條は憲法第三七條第三項に違反しない。 二 刑訴應急措置法第六條第一項には「引致された被告人又は被疑者に對しては直ちに犯罪事実の要旨及び辯護人を選任することができる旨を告げなければならない」と規定しているのてある。ところで本件記録を調査すると被告人は最初司法警察官より取調を受けた際辯護人を選任し得る…