刑事訴訟規則四四条によれば、所論の諸事項(註。被告人保護のため黙秘権等を告知すること等を指す)は、公判調書に記載することを要しないものである。それ故にそれ等の記載がなかつたからとて違法があつたものということはできない。
公判調書に被告人の権利保護のための告知事項の記載を欠いた場合と右告知の有無
刑訴法48条,刑訴法52条,刑訴法291条,刑訴規則44条(昭和26年最裁規15号による改正後のもの)
判旨
刑事訴訟規則44条が定める公判調書の記載事項に該当しない事項が調書に記載されていなくても、同規則に違反せず、その不記載を前提とする憲法違反の主張も認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟規則44条によって記載が不要とされた事項が公判調書に記載されていない場合、手続上の違法(およびそれを前提とする憲法違反)が認められるか。
規範
刑事訴訟規則44条の改正に基づき、公判調書への記載が義務付けられていない事項については、その記載が欠けていても手続上の違法は認められない。また、適法な手続によって作成された調書に基づき判断がなされる限り、不記載を理由とした憲法違反の主張も成立しない。
重要事実
被告人が刑事事件について上告した際、弁護人は、公判調書にあるべき事項の記載がないことが違法であり、ひいては憲法違反にあたると主張した。しかし、当該不記載とされた事項は、昭和26年に改正された刑事訴訟規則44条において、もはや記載を要しないと定められたものであった。また、本件論旨は控訴審において主張されておらず、原審の判断を経ていない事項であった。
あてはめ
刑事訴訟規則44条の改正(昭和26年11月20日最高裁判所規則15号)により、所論の諸事項は公判調書の必要的記載事項から除外されている。本件で弁護人が指摘する事項は、この改正後の同条によれば公判調書に記載することを要しない。したがって、それらの記載が欠けていたとしても刑事訴訟法上の違法は存在せず、違法な手続が行われたことを前提とする憲法違反の主張は、前提を欠くため採用できない。加えて、記録上も刑訴法411条の職権破棄事由は見当たらない。
結論
本件公判調書の記載に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公判調書の記載事項の適法性を検討する際、刑事訴訟規則(特に44条等の改正経緯)の要件充足性を基準とする。記載義務のない事項の欠落は、審理の適正や憲法上の適正手続に反しないことを示す射程を持つ。答案上は、手続の瑕疵を論じる際の前提として、規則上の義務の有無を確認する論法として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)511 / 裁判年月日: 昭和29年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に特定の事実の記載がない場合であっても、それが刑事訴訟規則44条等の法令により記載要件とされていない事項であれば、当該記載の欠如をもって直ちにその事実がなかったと断定することはできない。 第1 事案の概要:被告人側は、公判調書に特定の事実の記載がないことを理由として、その事実が実際には存在…