刑訴規則第四四条は、第一審における公判調書の記載要件であつて、控訴審における公判調書の記載要件ではない。
刑訴規則第四四条は控訴審に適用されるか
刑訴法48条2項,刑訴規則44条
判旨
控訴審における公判調書の記載については、刑訴規則44条が適用されないため、調書に明示的な記載がなくとも、調書の全体的な趣旨から証拠決定や事実の取調べがあったことを推認できる場合は、適法な手続が行われたものと解される。
問題の所在(論点)
控訴審において公判調書に証拠決定や事実の取調べの記載がない場合に、直ちに手続の違法を招くか。刑事訴訟規則44条の控訴審への適用範囲と、公判調書による手続推認の可否が問題となる。
規範
刑事訴訟規則44条は、第一審における公判調書の記載要件を定めたものであり、控訴審には直接適用されない。したがって、控訴審においては、証拠決定や事実の取調べが公判調書に明示的に記載されていない場合であっても、公判調書の全体の趣旨に照らして、それらの手続が行われたことを合理的に推認しうるのであれば、訴訟手続に違法はない。
重要事実
被告人が控訴審において事実の取調べ等を請求したが、控訴審の公判調書には、その証拠請求に対する証拠決定や実際の取調べに関する直接的な記載が欠落していた。弁護人は、この記載の欠落を理由として、適切な決定や取調べが行われなかった訴訟手続の法令違反がある(刑訴法405条)と主張して上告した。
あてはめ
まず、刑訴規則44条は第一審の公判調書の記載要件を規定するものであり、第二審にはそのまま適用されない。そのため、証拠決定や事実の取調べが必ずしも調書の必須記載要件とはならない。本件では、朗読された控訴趣意書の中に証拠調べ請求が包含されており、公判調書の全体的な趣旨を精査すれば、当該請求に対して適法な証拠決定がなされ、実際に事実の取調べが行われたことを推認することが可能である。したがって、記載がないことのみを理由として、手続が欠如していたと断定することはできない。
結論
控訴審の公判調書に証拠決定等の記載がなくても、調書の趣旨からそれらの実施が推認できる以上、訴訟手続の違法は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における公判調書の形式的な不備が、直ちに無効や違法事由にならないことを示す判例である。公判調書の証明力(刑訴法52条)に関連しつつも、第二審の特殊性を踏まえた緩やかな判断基準を提示しており、実務上は調書全体の文脈から手続の履践を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)477 / 裁判年月日: 昭和29年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において主張されず原判決が判断を示していない事項に関する違憲主張は、適法な上告理由にならない。また、刑事訴訟規則44条により公判調書の必要的記載事項は限定されており、同条に定めのない事項の不記載は手続上の違法を構成しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、第一審の訴訟手続において憲法違反…