判旨
公判調書に裁判官による黙秘権の告知の記載がないことのみをもって、直ちに黙秘権告知の事実がなかったと断定することはできない。
問題の所在(論点)
公判調書に黙秘権告知の記載がない場合、それだけで黙秘権告知がなされなかったものと認められ、手続上の違法(憲法違反)を構成するか。
規範
刑訴規則44条が定める公判調書の記載事項に該当しない事項については、調書に記載がなくても手続上の違法とはならず、また、特定の記載の欠如から直ちに当該手続の不実施を推認することはできない。
重要事実
被告人が、第一審の公判手続において裁判官による黙秘権の告知がなされなかったと主張し、その根拠として公判調書に告知の事実が記載されていないことを挙げ、憲法違反および訴訟手続違反を理由に上告した事案である。
あてはめ
刑訴規則44条によれば、裁判官による黙秘権の告知は公判調書に必ずしも記載することを要しない事項である。したがって、調書に記載がないからといって直ちに違法があったとはいえない。また、公判調書の記載を欠くという一事をもって、告知の手続自体がなされなかったものと評価することは論理的に飛躍しており、前提を欠くものと解される。
結論
公判調書に黙秘権告知の記載がなくても直ちに違法とはならず、告知がなかったともいえないため、上告は棄却される。
実務上の射程
公判調書の絶対的証明力(刑訴法52条)の対象外となる事項についての判断。記載がないことが即座に不実施を意味しないという消極的な推定を排する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和34(あ)885 / 裁判年月日: 昭和34年11月24日 / 結論: 棄却
被告人に対する黙否権の告知は、刑訴規則四四条によれば公判調書の必要的記載事項ではないのであるから、所論第一審第一回公判調書に右告知の記載がないからといつて、直ちにその手続が行われなかつたものということはできない。
事件番号: 昭和30(あ)586 / 裁判年月日: 昭和30年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】黙秘権の告知がなされなかったとしても、その一事をもって直ちに憲法38条1項に違反するものとはいえない。また、公判調書に告知の記載がないからといって、直ちに告知がなかったと断定することもできない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、公判審理の際などに黙秘権の告知がなされなかったと主張した事案…