一 司法警察員が犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を被告人に告げたことを必ず調書に記載すべき旨の法令の規定も存しないから、所論の警察員に対する被告人の供述調書に司法警察員が被告人に対して犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告知したことの記載が存しないからといつて、被告人の抑留をとらえて憲法第三四条に反するものということはできない。 二 証拠調前に裁判所が被告人に質問することは、裁判所がその裁量に基き必要であると思料して質問し、被告人がこれに対し任意に供述をした以上、必ずしも違法であるということはできない。 三 刑訴法第三七七条は、同法第四一四条により上告審に準用されるから審判の公開に関する規定違反を主張する上告趣意書には、同法第三七七条所定の保証書を添付することを要する。
一 司法警察員の被告人に対する供述調書に犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告知したことの記載を欠く場合と憲法第三四条 二 証拠調前の裁判所の被告人に対する質問 三 審判の公開に関する規定違反を理由とする上告と刑訴法第三七七条所定の保証書の添付
憲法34条,刑訴203条1項,刑訴法311条,刑訴法377条,刑訴法414条
判旨
司法警察員が逮捕時に権利告知を済ませている場合、翌日の取調べで重ねて告知する義務はなく、告知の事実が供述調書に記載されていなくても、直ちに不法な拘禁による証拠能力の否定はなされない。
問題の所在(論点)
逮捕後の権利告知が供述調書に記載されていない場合、その拘束は憲法34条に反する不法な拘禁にあたるか。また、取調べのたびに繰り返し権利告知を行う必要があるか。
規範
刑事訴訟法203条に基づく犯罪事実の要旨及び弁護人選任権の告知は、逮捕時に「直ちに」行われるべきものであり、一度適法に告知がなされた以上、その後の取調べにおいて重ねて告知を行う必要はない。また、告知の事実を供述調書に記載すべき旨を定めた法令上の規定も存在しないため、調書への記載欠如のみをもって憲法34条違反の不法な抑留・拘禁とは断定できない。
重要事実
被告人は昭和24年5月20日午後3時に逮捕・引致され、翌21日に司法警察員による第1回供述調書が作成された。被告人側は、当該供述調書に権利告知(犯罪事実の要旨および弁護人選任権)の記載がないことを理由に、憲法34条に違反する不法な勾留中に作成された証拠であり証拠能力がないと主張した。
あてはめ
本件では逮捕当日中に権利告知が行われるべき状況にあり、翌日の取調べにおいて再度告知を行う要はない。供述調書に告知の事実が記載されていないとしても、法令上記載が義務付けられていない以上、その事実をもって直ちに不法な抑留・拘禁があったとは評価できない。したがって、本件の供述調書は不法な勾留下で作成されたものとは認められない。
結論
本件供述調書の作成手続に憲法34条違反の違法はなく、証拠能力は否定されない。
実務上の射程
逮捕手続の適法性と供述調書の証拠能力が争われる場面で、権利告知の反復継続の不要性を裏付ける論拠として活用できる。ただし、現代の運用では告知の有無は重要視されるため、手続の適正さを担保する最小限の基準を示すものと解すべきである。
事件番号: 昭和30(あ)965 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に裁判官による黙秘権の告知の記載がないことのみをもって、直ちに黙秘権告知の事実がなかったと断定することはできない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審の公判手続において裁判官による黙秘権の告知がなされなかったと主張し、その根拠として公判調書に告知の事実が記載されていないことを挙げ、憲法違反…