刑訴應急措置法第三條は、舊刑訴法第三九條第二項の所定の者に對し、被疑者が勾留された事實並びに辯護人の選任權ある旨の通知すべき義務までを裁判所に課したものではない。
刑訴應急措置法第三條の法意
刑訴應急措置法3條,舊刑訴法39條2項
判旨
勾留手続における弁護人選任権の告知事実に係る調書記載が不動文字であっても、反対資料がない限り無効とはならず、また裁判所に請求権の積極的告知や親族等への通知義務を課すものではない。
問題の所在(論点)
1. 調書における弁護人選任権の告知事実の記載が不動文字である場合、その記載は無効となるか。2. 裁判所に弁護人選任請求権の積極的な告知義務や、親族等への通知義務は認められるか。
規範
1. 調書の記載が不動文字(印刷された定型文)であっても、その告知事実を否定するに足りる資料がない限り、記載は有効である。2. 裁判所は、被疑者・被告人に対し、弁護人選任請求権があることを積極的に告知する義務や、親族等(旧刑訴法39条2項所定の者)に対して勾留事実および選任権を通知する義務までを負うものではない。
重要事実
被告人の勾留に際し、裁判官が弁護人選任権を告知した旨が不動文字で記載された調書が作成された。被告人(当時の被疑者)は当該調書の内容に相違ない旨を申し立て、署名・捺印していた。弁護人は、不動文字による記載は無効であり告知がなかったに等しいこと、また裁判所が権利の存在を積極的に告知せず、親族等へも通知しなかったことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
1. 本件調書には「弁護人選任し得る旨告げたり」との不動文字の記載があるが、これを否定する資料は存在しない。むしろ、被告人が内容を読み聞かせられた上で署名捺印していることから、告知の事実は認められる。2. 刑事訴訟応急措置法4条は被告人の請求があることを前提としており、裁判所に積極的な告知義務を課す明文はない。また、親族等への通知についても、裁判所に義務を課す解釈は成立しない。
結論
本件勾留手続に憲法34条違反等の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
勾留手続の適法性を争う際の証拠資料(調書)の証拠力に関する判断。裁判所の教示・通知義務の限界を示す判例であり、手続違法を主張する際の反論として機能する。ただし、勾留の適法性自体は別途救済手段(準抗告等)によるべきであり、上告理由とはなりにくい点にも留意が必要。
事件番号: 昭和26(あ)2914 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項前段の弁護人依頼権は、被告人が自ら行使すべきものであり、裁判所に選任請求が可能であることの告知義務を課すものではない。また、必要的弁護事件の範囲は立法政策により決定されるものであり、直ちに憲法31条や37条から定まるものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、原審(控訴審)において…