論旨は司法警察職員が被疑者以外の者を取調べ其供述を録取した供述調書はあらかじめ供述を拒むことができる旨を告げた形跡がないから不合法のものであると主張する。しかし刑訴法第二二三條第二項は檢察官檢察事務官又は司法警察職員が犯罪捜査の必要上被疑者以外の者を取調べる場合に同法第一九八條第一項但書及び第三項乃至第五項の規定を準用する旨を規定し特に第二項の規定の準用を除外している點に鑑みれば被疑者以外の者の供述を録取するに當つては供述を拒むことができる旨をあらかじめ告げる必要はない趣旨であると解すべきであるから論旨は理由がない。
司法警察職員が被疑者以外の供述を録取するにつき、その供述を拒むことができる旨をあらかじめ告げることの要否
刑訴法223條2項,刑訴法198條2項
判旨
自白の補強証拠は、犯罪が架空のものではなく現実に行われたことを証すれば足り、被告人と犯人の結びつきを証する必要はない。また、捜査機関が第三者から事情聴取を行う際、あらかじめ黙秘権を告知する必要はない。
問題の所在(論点)
1. 自白の補強証拠は、被告人が犯人であることを証明するものである必要があるか。2. 捜査機関が被疑者以外の者(参考人)を取り調べる際、あらかじめ自己の意思に反して供述する必要がない旨(黙秘権)を告知する義務があるか。
規範
1. 憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう補強証拠は、被告人の自白に係る犯罪事実が架空のものでなく、客観的に発生したものであることを担保するものであれば足り、犯人が被告人であることを直接裏付ける必要はない。2. 刑訴法223条2項が同法198条2項(黙秘権告知義務)を準用していないことから、被疑者以外の者の取調べに際し、あらかじめ黙秘権を告知することは要しない。
重要事実
被告人の自白と、司法警察官及び検察官が作成した各調書(被告人の供述調書や弁解録取書等)に基づき犯罪事実が認定された事案。弁護人は、自白の補強証拠が被告人と犯人の結びつきを証明していない点、及び第三者の供述調書作成時に黙秘権告知がなされていない点が違法であると主張して上告した。
あてはめ
1. 補強証拠は、自白の真実性を担保し架空の犯罪を処罰することを防ぐ趣旨である。本件では、被告人の司法警察官に対する供述調書等により、犯行及びその前後の事実関係が客観的に裏付けられており、これらは架空の犯罪でないことを示す補強証拠として十分である。2. 刑訴法223条2項は、第三者の取調べについて198条1項但書、3項から5項までを準用する一方で、黙秘権告知を定めた同条2項の準用を意図的に除外している。したがって、黙秘権告知を欠いた第三者の供述録取手続に違法はない。
結論
1. 補強証拠は犯人と被告人の結びつきまで証明することを要しない。2. 第三者の取調べにおいて黙秘権告知は不要である。よって、原判決の証拠調べ及び事実認定に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
補強証拠の範囲(罪体説)を明示した重要判例である。答案では、自白の真実性が問題となる場面で『補強証拠は客観的な犯罪の発生を裏付ければ足りる』との規範を引用し、犯人性の立証まで求めない立場を明確にするために用いる。また、参考人調書の証拠能力が争われる際の黙秘権告知の要否(不要)の根拠としても有用である。
事件番号: 昭和25(れ)690 / 裁判年月日: 昭和25年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項等の「自白」に含まれず、補強証拠なしに犯罪事実を認定できる。したがって、罪となるべき事実ではない「前科の事実」を公判廷における被告人の供述のみで認定することは違法ではない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪に問われ、原審の公判廷において自らの前科に関する…