判旨
公判調書において裁判官と弁護人の役職名等が誤記されている場合であっても、他の記載や経緯からその誤記が明白であれば、当該手続の適法性に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
公判調書における役職名等の誤記が、訴訟手続の適法性や判決の妥当性に影響を及ぼすか(調書の証明力と誤記の許容性)。
規範
公判調書の記載に明らかな誤記がある場合、調書の他の部分の記載や訴訟手続の客観的状況を総合して判断し、誤記であることが明白であれば、その誤記を前提とした手続違背の主張は認められない。
重要事実
被告人側は、原審の第五回公判調書において「裁判長」と記載されている箇所があることを捉え、手続上の違法を主張した。しかし、当該公判調書には弁護人が出頭している旨が記載されており、文脈上、その「裁判長」という記載は実際には「弁護人」の誤記であることが明らかな状態であった。また、第一審の調書に関する主張もなされたが、これは覆審である原審の手続とは直接関係のないものであった。
あてはめ
本件では、原審第五回公判調書に「弁護人出頭」との正確な記載があり、前後の文脈を照らせば、所論の「裁判長」という記載は弁護人の誤記であることが客観的に明白である。このように、単なる形式的な誤記にとどまり、実体的な手続の瑕疵を意味しない場合には、適法な手続が履践されたものと評価できる。したがって、誤記を前提とする違法の主張は、前提を欠くものとして排斥される。
結論
本件公判調書の記載は明白な誤記であり、原判決に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
公判調書の記載の信頼性が争われる場面において、些末な誤字脱字や明らかな役職名の取り違えがあったとしても、調書全体の整合性から正当な内容が推認できる場合には、手続違憲や絶対的控訴理由(刑訴法379条等)には当たらないことを示す。実務上は、調書の更正や記載の合理的な解釈の限界を示す事例として機能する。
事件番号: 昭和26(あ)4017 / 裁判年月日: 昭和28年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意において指摘された日付等の誤記が、記録に照らして明白な書き損じである場合には、刑罰法令の適用誤りや事実誤認等の重大な事由には当たらず、上告理由にならない。 第1 事案の概要:弁護人が上告趣意において「第四回」供述調書の不当性を主張したが、当該調書は実際には「昭和24年3月31日付」の司法警…