連續一罪を構成する數個の詐欺の事實を判示するに當つては、必ずしも各個の犯罪行爲を逐一個別的に明確に説示することを要するものと言うことはできない。その行爲の内容の表示は、同一罪質を有する複數のものであることを理解し得べき程度に具體的になされるをもつて足るのである。すなわち、行爲の始期及び終期を明かにし、各個の行爲に共通する詐欺の手段、賍物、賍額その他を一括する等の方法をもつて數個の行爲を總括して表示すれば事足ると言うことができる。
連續犯たる數個の詐欺行爲事實の判示方法
刑法55條,刑訴法360條
判旨
連続一罪を構成する数個の詐欺事実を判示する場合、各個の行為を個別に明確に説示する必要はなく、始期・終期や共通の手口、被害総額を一括して表示することで足りる。
問題の所在(論点)
数個の詐欺行為が連続一罪を構成する場合において、判決書における犯罪事実の判示として、各個の行為の日時・場所・対象を個別具体的に特定せず、期間や総額を一括して記載する手法が許容されるか。
規範
判決における犯罪事実の判示は、同一罪質を有する複数の行為であることを理解し得る程度に具体的になされれば足りる。具体的には、行為の始期及び終期を明らかにし、各個の行為に共通する手段、贓物、贓額その他を一括して総括的に表示する方法であっても、適法な理由付として許容される。
重要事実
被告人は、昭和22年4月10日から同月22日までの間、前後4回にわたり、Bに対し衣類を買う意思等がないのに嘘を言い、衣類買受代金名目等で合計金4万2580円および衣類1枚を交付させて騙取した。また、同年5月25日から30日までの間にも、Cに対し虚偽の申出をして布団外10点を騙取した。これに対し弁護人は、回数ごとの日時や物件が明記されておらず、犯罪事実の特定が不十分であり、判決に理由を付さない違法(旧刑訴法410条1項19号)があると主張して上告した。
あてはめ
本件では、判決において被告人の詐欺行為の始期と終期(4月10日から22日、5月25日から30日)が示されており、詐欺の手段(買受意思がないのに申し向けた等)や、被害額および物件の総計が明示されている。これらの記載により、被告人の行為が同一罪質を有する複数の犯罪事実から成ることが十分に理解可能である。したがって、各行為を逐一個別的に特定していなくとも、犯罪事実の判示として必要かつ十分な具体性を備えているといえる。
結論
連続一罪を構成する詐欺の事案において、期間、共通の手口、総額等を包括的に表示して事実判示を行うことは適法であり、理由不備の違法は存しない。
実務上の射程
包括一罪や連続一罪(現行法上の実務では数個の詐欺も併合罪とされるが、一括して起訴状に記載される場合の訴因特定にも通じる)の事実摘示の程度に関する基準を示す。審判対象の特定という観点から、被告人の防御に支障がない限度で、期間や総額による概括的記載が許容される範囲を確定する際に活用できる。
事件番号: 昭和37(あ)2626 / 裁判年月日: 昭和38年4月16日 / 結論: 棄却
原判決が是認した第一審判決の事実摘示は、本件二一回の詐欺の各犯罪事実につき、犯行の年月日、犯行の場所、被害者、被欺罔者、詐取した商品、その価格を、各犯罪行為毎に具体的に一覧表として記載しており、欺罔の方法は単純でありかつ同一方法であるので、これを一括して理由の本文中に記載しているのであるから、右本文と一覧表と相まつて、…