判旨
判決書に記載すべき犯罪の日時は、犯行の同一性を特定するに足りる程度に示されていれば足り、必ずしも数学的な正確さを要しない。
問題の所在(論点)
判決書に記載すべき犯罪の日時(刑事訴訟法における罪となるべき事実の摘示)について、どの程度の具体性が求められるか。
規範
判決書における犯罪日時の表示は、被告人の防御の範囲を画定し、二重起訴や既判力の抵触を避けるため、犯行の同一性を特定するに足りる程度に記載されていれば足りる。必ずしも具体的な月日までを数学的に正確に記載することまでは要しない。
重要事実
被告人は、昭和22年10月中および同年11月中、石灰工場に既に実在しない人夫が依然として存在しているかのように装い、主食等の配給を不正に受けたとして詐欺罪に問われた。原判決の判示において、犯罪日時は「昭和22年10月中」「同年11月中」等と月単位で記載されており、具体的な受配の日までは表示されていなかった。これに対し被告人側が、日時の記載が不十分であるとして上告した。
あてはめ
本件では、犯行が行われた「月」が特定されており、場所や方法(実在しない人夫を装った配給詐欺)と相まって、他の犯罪事実と区別できる程度に具体化されている。犯行の同一性を特定するに足りる程度の記載がなされている以上、具体的な日(何日か)まで特定されていなくても、被告人の防御に支障をきたすものではなく、適法な事実摘示といえる。
結論
判決書に犯罪の日時を「某月中」と記載することは、犯行の同一性を特定するに足りるため、適法である。
実務上の射程
訴因の特定(刑訴法256条3項)や罪となるべき事実の摘示(同335条1項)において、日時の特定が困難な場合の許容限度を示す基準として機能する。アリバイ主張等の防御に具体的な支障が生じない限り、概括的な記載も許容されるという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和24(れ)2589 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
詐欺罪において財物の所有者は、他人なることが明らかであれば必ずしも具体的に何人であるかを判示しなくとも犯罪構成要件に欠けるところはない。原判決においては東京都江東区a町b丁目c番地食糧公団東京都B支所C配給所における係員と表示してあるので、且つ証拠説明によれば被害者がAであることがわかるから、詐欺罪の相手方の表示として…