判旨
判決文中の事実摘示において人名の誤記があったとしても、判決全体の趣旨から誤りであることが明白であり、正しい対象に対して欺罔行為及び財物奪取が行われたと認められる場合には、判決の違法とはならない。
問題の所在(論点)
判決書に記載された被害者の氏名が誤っていた場合、当該事由は原判決を破棄すべき違法(刑事訴訟法上の理由)となるか。
規範
判決書における事実摘示に単純な誤記がある場合であっても、前後の文脈や判示内容全体から判断して、本来意図された事実関係を正当に認定していると認められるときは、上告理由となるような違法な判決には当たらない。
重要事実
被告人は、被害者Bに対して嘘を言い、同女を誤信させて財物を騙取したとして詐欺罪に問われた。しかし、原判決の事実摘示部分において、被害者の氏名が「B」ではなく「A」と誤って記載されていた。
あてはめ
原判決の事実摘示において「A」とあるのは「B」の誤記であることは、判決の他の記載に照らせば明らかである。原判決は実態としてBに対して嘘を言い、同女を誤信させ、同女から財物を騙取した旨を判示していると認められる。したがって、氏名の誤記は判決の結論に影響を及ぼすような本質的な違法とはいえない。
結論
本件上告を棄却する。氏名の誤記は判決全体の趣旨から修正して理解することが可能であり、違法はない。
実務上の射程
判決書の単純な記載ミス(誤記)に関する判例であり、実務上は更正決定(刑訴法43条等参照)の対象となり得る軽微な瑕疵が上告理由にならないことを示したものである。答案上は、手続的瑕疵が判決に及ぼす影響の程度を検討する際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1488 / 裁判年月日: 昭和27年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決に掲げられた証拠の作成者名が記録上の作成者名と多少相違していても、それが単なる誤記または脱字であることが記録上明白であれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告した事案において、第一審判決が証拠として掲記した「顛末書」の作成者(被害者)の氏名と、実際に記録…