判旨
判決書の適条部分において、一部に誤記と思われる無用の記載があっても、他の部分と合わせて読めばその意味が明らかである場合には、判決に違法はない。
問題の所在(論点)
判決書の適条の部に、実体法上の構成要件と条文番号が整合しない「無用の記載」が含まれている場合、判決に法令適用の違法が認められるか。
規範
判決書の適条の部に誤記(または不要な記載)がある場合であっても、判決の他の部分と照らし合わせて解釈し、判決全体の趣旨が明確に理解できるときは、法令適用の誤り等の違法は存しないと解する。
重要事実
被告人の窃盗および詐欺の罪数・適条が問題となった事案。原判決の適条の部において、「被告人の判示所為中各窃盗の点はいずれも刑法六〇条、二三五条に、詐欺の点はいずれも刑法六〇条、二三五条に、詐欺の点は同法六〇条、二四六条一項にそれぞれあたるところ」と説示されていた。弁護人は、この記載に矛盾があるとして上告を申し立てた。
あてはめ
原判決の説示には、詐欺の点について「二三五条(窃盗罪)」を適用する旨の誤記とも取れる記載が含まれている。しかし、他の部分と合わせて読めば、当該箇所が「詐欺の点は刑法六〇条、二四六条一項(詐欺罪)にあたる」と正しく説示した後の「無用の記載」であることが明らかである。したがって、判決全体として法令適用の誤りがあるとは認められない。
結論
原判決に法令適用の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
形式的な記載ミス(誤記)が直ちに判決の破棄理由になるわけではなく、判決書全体の合理的な解釈によってその趣旨が補完・訂正可能であれば、適法な判決として維持されるという実務上の判断基準を示している。
事件番号: 昭和25(れ)1734 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文中の事実摘示において人名の誤記があったとしても、判決全体の趣旨から誤りであることが明白であり、正しい対象に対して欺罔行為及び財物奪取が行われたと認められる場合には、判決の違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、被害者Bに対して嘘を言い、同女を誤信させて財物を騙取したとして詐欺罪に問わ…