判旨
判決書に記載された被害者の氏名が誤記であることが記録上明白である場合には、審判の請求を受けない事件について判決した違法(不告不理の原則違反)は認められない。
問題の所在(論点)
判決書に公訴事実と異なる人物(被害者氏名)が記載されている場合に、審判の請求を受けない事件について判決した違法(不告不理の原則違反)が生じるか。
規範
判決書における事実摘示に誤りがあったとしても、それが一件記録に照らして単純な誤記であることが明白である場合には、その記載を本来の事実に読み替えて判断すべきであり、直ちに審判の対象外の事実を認定した違法(刑事訴訟法378条3号参照)があるとはいえない。
重要事実
第一審判決の事実摘示において、被害者の氏名を「B」と表示していた。しかし、一件記録に徴すれば、本来の被害者は「C」であり、判決書の「B」という表示は「C」の単純な誤記であることが明白であった。
あてはめ
本件では、判決書に記載された被害者名「B」は、記録上明らかに「C」の誤記であると認められる。このように、誤記であることが客観的な記録から明白である以上、裁判所は実質的に起訴状の範囲内にある事件を審理・判断したものといえる。したがって、審判の請求を受けていない別人を対象とした判決を下したという評価はあたらない。
結論
本件判決には、審判の請求を受けない事件について判決した違法はなく、また証拠に基づかない事実認定の違法も認められない。
実務上の射程
判決書の誤記訂正に関する実務的な判断枠組みを示している。明らかな誤記であれば不告不理違反とはならないため、答案上は、記載の不一致があっても『記録上誤記が明白か』という観点から、審判対象(訴因)と判決の同一性を検討する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)3485 / 裁判年月日: 昭和29年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が事実認定の証拠とした書面と、公判調書に証拠調べが行われた旨の記載がある書面とが、作成名義等の表示において多少の差異があっても、記録上同一の書類と認められる限り、証拠手続に違法はない。 第1 事案の概要:第一審判決は、事実認定の証拠として「C提出の盗難被害届」を挙げた。一方、第一審第一回…