判旨
第一審判決が事実認定の証拠とした書面と、公判調書に証拠調べが行われた旨の記載がある書面とが、作成名義等の表示において多少の差異があっても、記録上同一の書類と認められる限り、証拠手続に違法はない。
問題の所在(論点)
判決が証拠とした書類の名称と、公判調書に証拠調べの記録がある書類の名称が相違する場合に、証拠調べを経ない証拠に基づき事実を認定した違法(刑事訴訟法317条、320条1項違反等)が認められるか。
規範
判決において事実認定の証拠とされた書類が、公判調書上の証拠調べの対象とされた書類と、その名称や名義の表示において形式上の不一致があったとしても、記録上客観的に同一の書類であると認められる場合には、適法な証拠調べを経たものと解する。
重要事実
第一審判決は、事実認定の証拠として「C提出の盗難被害届」を挙げた。一方、第一審第一回公判調書には、証拠調べが行われたものとして「A提出の盗難被害届」と記載されていた。記録によれば、被害者であるB工業株式会社の社長Aの代理人としてCが提出した盗難被害届が存在し、これら両者は同一の書面を指すものであった。
あてはめ
本件において、公判調書に記載された「A提出の盗難被害届」は、B工業株式会社社長Aの代理人としてCが提出した書類(記録9丁)を指している。これは、第一審判決が証拠として掲げた「C提出の盗難被害届」と実質的に同一のものを指していることが記録上明らかである。したがって、名称の表示に差異はあるものの、判決の基礎となった証拠は、既に適法な証拠調べの手続きを経たものといえる。
結論
判決が証拠とした「C提出の盗難被害届」は、公判調書に記載された「A提出の盗難被害届」と同一であり、証拠調べを経ていない証拠に基づき事実を認定したという違法は認められない。
実務上の射程
証拠調べの有無は公判調書の記載によって決せられる(刑事訴訟法48条1項、52条参照)が、その記載が判決文の表示と完全に一致しない場合でも、記録を精査して客観的同一性が認められれば、証拠裁判主義(317条)違反を回避できる。答案上は、証拠調べの有無が争点となる際、形式的な名称のみならず、実質的な同一性の有無を指摘する根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(れ)2483 / 裁判年月日: 昭和25年2月9日 / 結論: 棄却
原判決が各窃盜の事實を認定する證據中に所論の窃盜被害追加届を舉示していること及び論旨に指摘の昭和二四年四月二六日の原審第二回公判調書中の記載部分に「各盜難被害届」「盜難被害品追加届」の記載は存在するが所論の盜難被害追加届の記載が存しないことは所論のとおりである。しかし所論の盜難被害追加届に「…盜まれた品物は一、イデ…ン…